コラム
2007年07月30日
バフェット氏がペトロチャイナ株を一部売却
7/28,29のFTが伝えている
去る5月のバークシャーハザウェイの株主総会で、人権擁護団体から売却を要求されていた
ペトロチャイナの政府系親会社がジェノサイドで非難されているスーダン政府と関係があるためだ
他報道でもよく知られたように、スーダン政府は国内でのジェノサイド(大量虐殺)を黙認しているとされる
ジェノサイドはイスラム系の部族が非イスラム系の村を襲う形で行われているが、政府はその防止に積極的でないとされ、アフリカ連合(AU)軍が出動する自体となっている
バークシャーハザウェイの株主総会では、バフェット氏は人権擁護団体の提案をはねのけている
ペトロチャイナ自体がスーダンと関与しているわけではないからだ
この提案は98%の株主の賛同を得て否決された
それから2か月後の今月、バークシャーハザウェイはペトロチャイナのH株の浮動株の持分比率を11.05%から10.96%へ減らしている
売却額は27百万ドルとのこと
極めて少額の売却ではあるが、市場ではバフェット氏の中国への見方が後退したのではとの憶測を呼んだ
去る5月のバークシャーハザウェイの株主総会で、人権擁護団体から売却を要求されていた
ペトロチャイナの政府系親会社がジェノサイドで非難されているスーダン政府と関係があるためだ
他報道でもよく知られたように、スーダン政府は国内でのジェノサイド(大量虐殺)を黙認しているとされる
ジェノサイドはイスラム系の部族が非イスラム系の村を襲う形で行われているが、政府はその防止に積極的でないとされ、アフリカ連合(AU)軍が出動する自体となっている
バークシャーハザウェイの株主総会では、バフェット氏は人権擁護団体の提案をはねのけている
ペトロチャイナ自体がスーダンと関与しているわけではないからだ
この提案は98%の株主の賛同を得て否決された
それから2か月後の今月、バークシャーハザウェイはペトロチャイナのH株の浮動株の持分比率を11.05%から10.96%へ減らしている
売却額は27百万ドルとのこと
極めて少額の売却ではあるが、市場ではバフェット氏の中国への見方が後退したのではとの憶測を呼んだ
2007年07月20日
東京地裁による村上氏への判決
東京地裁が村上ファンドによるインサイダー取引について有罪として実刑2年を言い渡した
日本が「社会主義」的思潮を回復しつつある中で、その線に沿った判決であったといえよう
しかし、最近の地裁・高裁の判断はあまりにも市場に対して無知な面が多い
速やかに判断を下すことには利点が多いが、稚拙に過ぎる場合には、何かを同時に提案すべきではないか
村上ファンドのインサイダー取引を有罪とするのは、一つの判断だろう
それが民意をくむものであるなら、それを否定すべきものではない
しかし、単純に有罪を言い渡すだけに終われば、それは通常の資本市場の営みまで阻害しかねない
理想的には時間をかけて、違法性の基準について根を詰めて定義を明らかにすべきだった
M&Aの世界では、隠密裏にストラテジック・トークを交わすのは通常のことだ
今回の判決では、そのような当たり前の営みまで制約を課してしまう危険性が高い
そこで、どのような不都合が起こりうるか、例を想定してみたい
@ホワイト・ナイト外し
ある筋の悪い投資家が乗っ取りを企んだとする
まさに株主の公共の利益に反するような乗っ取りであることを、神様まで認めるような事例だと仮定してほしい
しかし、その会社にはホワイト・ナイト候補がいたとする
そこで、乗っ取り屋は考える
乗っ取り屋はホワイト・ナイト候補のところに行き、
・自分の投資計画、経営戦略を説明し
・ホワイト・ナイト候補に共同投資を呼びかける
ホワイト・ナイト候補は、もとより共同する気持ちはない
ホワイト・ナイトとして株式の防衛買いをしようとする
しかし、それはインサイダー取引に該当してしまう
なぜなら、乗っ取り屋が買収を進める詳細についてインサイダー情報を知ってしまったからだ
これを咎めるのは不公平ではないか
A買収防衛策
機関投資家が投資の前後に発行体に会社・財務内容をヒアリングするのは通常行われていることだ
仮に、発行体がその機関投資家(または投資ファンド)を株主として歓迎したくないとする
そこで、発行体は考える
発行体は機関投資家の投資前のヒアリングで、意図的にインサイダー情報について口を滑らせる
機関投資家はそのインサイダー情報までは期待していなかったが、たまたま聞かされてしまう
その時点で、その機関投資家は買いに入ることができなくなってしまう
これを咎めるのは不公平ではないか
BMBO
ある経営者が、心から自社の経営改善を願ってMBOを考えたとする
もちろん、重要事項についていくつも知る立場にある
その時点で自社の株式を買うことはインサイダー取引ではないか
これは咎めることは構わないものの、そうしてしまうとMBOというのは事実上存在しえなくなる
C投資銀行の勧誘
投資銀行が潜在的な買い手に対して、ある会社の買収を提案するとする
投資銀行は買収対象と買い手の間を行き来して、会話をとりもったりする
そこで、たまたま買い手に第三者の知りえない情報が伝わってしまった
その上で買い手が買収を行えばインサイダー取引ではないか
これは禁止することは可能だが、そうすればM&Aは激減するだろう
Dデューディリジェンス
買収交渉が最終局面を向かえ、デューディリジェンスを行った
デューディリジェンスでは多くのインサイダー情報に接する
その上で最終的に買収の可否を決定するが、それはインサイダー取引ではないのか
これを禁止すれば、事実上M&Aは目をつぶって行わざるを得なくなる
以上のようなことが私の懸念である
むろん、図らずしてインサイダー情報を知ってしまった買い手は、その事実を公表してから買い進むという方法はあろう
守秘義務契約を結んでいない限り、契約上は可能かもしれない
しかし、信義則で行動するビジネス界において、守秘義務契約がないからといって相手方の重要な情報をペラペラしゃべるなどありえない
何かセーフ・ハーバー・ルールがいる
シティ・コードのようなものかもしれない
放置したままというのは最もよろしくない
日本が「社会主義」的思潮を回復しつつある中で、その線に沿った判決であったといえよう
しかし、最近の地裁・高裁の判断はあまりにも市場に対して無知な面が多い
速やかに判断を下すことには利点が多いが、稚拙に過ぎる場合には、何かを同時に提案すべきではないか
村上ファンドのインサイダー取引を有罪とするのは、一つの判断だろう
それが民意をくむものであるなら、それを否定すべきものではない
しかし、単純に有罪を言い渡すだけに終われば、それは通常の資本市場の営みまで阻害しかねない
理想的には時間をかけて、違法性の基準について根を詰めて定義を明らかにすべきだった
M&Aの世界では、隠密裏にストラテジック・トークを交わすのは通常のことだ
今回の判決では、そのような当たり前の営みまで制約を課してしまう危険性が高い
そこで、どのような不都合が起こりうるか、例を想定してみたい
@ホワイト・ナイト外し
ある筋の悪い投資家が乗っ取りを企んだとする
まさに株主の公共の利益に反するような乗っ取りであることを、神様まで認めるような事例だと仮定してほしい
しかし、その会社にはホワイト・ナイト候補がいたとする
そこで、乗っ取り屋は考える
乗っ取り屋はホワイト・ナイト候補のところに行き、
・自分の投資計画、経営戦略を説明し
・ホワイト・ナイト候補に共同投資を呼びかける
ホワイト・ナイト候補は、もとより共同する気持ちはない
ホワイト・ナイトとして株式の防衛買いをしようとする
しかし、それはインサイダー取引に該当してしまう
なぜなら、乗っ取り屋が買収を進める詳細についてインサイダー情報を知ってしまったからだ
これを咎めるのは不公平ではないか
A買収防衛策
機関投資家が投資の前後に発行体に会社・財務内容をヒアリングするのは通常行われていることだ
仮に、発行体がその機関投資家(または投資ファンド)を株主として歓迎したくないとする
そこで、発行体は考える
発行体は機関投資家の投資前のヒアリングで、意図的にインサイダー情報について口を滑らせる
機関投資家はそのインサイダー情報までは期待していなかったが、たまたま聞かされてしまう
その時点で、その機関投資家は買いに入ることができなくなってしまう
これを咎めるのは不公平ではないか
BMBO
ある経営者が、心から自社の経営改善を願ってMBOを考えたとする
もちろん、重要事項についていくつも知る立場にある
その時点で自社の株式を買うことはインサイダー取引ではないか
これは咎めることは構わないものの、そうしてしまうとMBOというのは事実上存在しえなくなる
C投資銀行の勧誘
投資銀行が潜在的な買い手に対して、ある会社の買収を提案するとする
投資銀行は買収対象と買い手の間を行き来して、会話をとりもったりする
そこで、たまたま買い手に第三者の知りえない情報が伝わってしまった
その上で買い手が買収を行えばインサイダー取引ではないか
これは禁止することは可能だが、そうすればM&Aは激減するだろう
Dデューディリジェンス
買収交渉が最終局面を向かえ、デューディリジェンスを行った
デューディリジェンスでは多くのインサイダー情報に接する
その上で最終的に買収の可否を決定するが、それはインサイダー取引ではないのか
これを禁止すれば、事実上M&Aは目をつぶって行わざるを得なくなる
以上のようなことが私の懸念である
むろん、図らずしてインサイダー情報を知ってしまった買い手は、その事実を公表してから買い進むという方法はあろう
守秘義務契約を結んでいない限り、契約上は可能かもしれない
しかし、信義則で行動するビジネス界において、守秘義務契約がないからといって相手方の重要な情報をペラペラしゃべるなどありえない
何かセーフ・ハーバー・ルールがいる
シティ・コードのようなものかもしれない
放置したままというのは最もよろしくない
2007年07月19日
4723 グッドウィルのFBFの経過
以前触れたグッドウィルのFBFについて、実行後の経過を記録する
基準価格(7/6の東証終値)は42,500円であったため、払込金額は0.6倍の25,500円となった
25,500÷0.95=26,842円
2営業日の平均がこの価格を切ると、行使価格は下限の1円となる
7/19終値は27,660円と、この水準に近づいている
さて、このFBFは普通のMSCBとは異なり、フロアが付いているのが特徴だった
これにより希薄化に限度が設けられているとされていた
しかしながら、株価はMSCBと同じように下落を始めた
条件決定日までは下げ幅がきつくなかったのに、その後、株価が下落した
フロアがついているから、そのフロアの辺りで下げ止まることもありうるが、それでもかなりの下げである
発行済み株式数に対して2割、かつ限定的な希薄化であることを考えると、やや下げすぎの感もある
帰納的な推測をしてみる
ドイツ銀行ほどの金融機関だから、グッドウィル株について何のバリュエーションも持たずに引受はするまい
とすれば、本ファイナンスの発表日6/25の前日終値53,200円にはそれなりの意味があったろう
これから下落することを予想していたとしても、その当時にドイツ銀行が考えるフェアバリューに近かったのではないか
そうだとすると、いかにドイツ銀行には損失が発生しにくいFBFであったとしても、今回の株価下落は予想以上のものとなりつつあるように思う
ここまで出来高をともなって株価が下落すると、ドイツ銀行の持分を売り抜けるのも骨だろう
グッドウィルは当初もくろんだほどには資金調達できなかった
株価もフロア近くまで下がった
ある面、悪い材料は出尽くした感がある
これ以上悪い材料があるとすれば、
・8月に発表されるであろう07年6月期の業績予想修整
・さらなるネガティブ・ニュース
・コムソン売却の不調
だろう
逆にそのような材料が新たにでなければ、最悪期を脱したことにもなりうる
なお、コムソン売却については、
・店晒しが続いて、事業が無価値になるのがワースト・シナリオ
・M&Aの常として、突然、公表されるのがベスト・シナリオ
いずれにしても、当面は株価が神経質な動きを続ける可能性が高い
基準価格(7/6の東証終値)は42,500円であったため、払込金額は0.6倍の25,500円となった
25,500÷0.95=26,842円
2営業日の平均がこの価格を切ると、行使価格は下限の1円となる
7/19終値は27,660円と、この水準に近づいている
さて、このFBFは普通のMSCBとは異なり、フロアが付いているのが特徴だった
これにより希薄化に限度が設けられているとされていた
しかしながら、株価はMSCBと同じように下落を始めた
条件決定日までは下げ幅がきつくなかったのに、その後、株価が下落した
フロアがついているから、そのフロアの辺りで下げ止まることもありうるが、それでもかなりの下げである
発行済み株式数に対して2割、かつ限定的な希薄化であることを考えると、やや下げすぎの感もある
帰納的な推測をしてみる
ドイツ銀行ほどの金融機関だから、グッドウィル株について何のバリュエーションも持たずに引受はするまい
とすれば、本ファイナンスの発表日6/25の前日終値53,200円にはそれなりの意味があったろう
これから下落することを予想していたとしても、その当時にドイツ銀行が考えるフェアバリューに近かったのではないか
そうだとすると、いかにドイツ銀行には損失が発生しにくいFBFであったとしても、今回の株価下落は予想以上のものとなりつつあるように思う
ここまで出来高をともなって株価が下落すると、ドイツ銀行の持分を売り抜けるのも骨だろう
グッドウィルは当初もくろんだほどには資金調達できなかった
株価もフロア近くまで下がった
ある面、悪い材料は出尽くした感がある
これ以上悪い材料があるとすれば、
・8月に発表されるであろう07年6月期の業績予想修整
・さらなるネガティブ・ニュース
・コムソン売却の不調
だろう
逆にそのような材料が新たにでなければ、最悪期を脱したことにもなりうる
なお、コムソン売却については、
・店晒しが続いて、事業が無価値になるのがワースト・シナリオ
・M&Aの常として、突然、公表されるのがベスト・シナリオ
いずれにしても、当面は株価が神経質な動きを続ける可能性が高い
2007年07月11日
2804 ブルドックソース買収防衛策についての東京高裁の決定
2007/7/10日本経済新聞に掲載された要旨から、重要な部分の骨子とコメント
株式会社を
これは、昨年試行された会社法に対する重要な一解釈である
企業価値研究会や会社法の法制化にあたっては、メンバーの大半が企業価値を株主価値と考える考え方をとったと伝えられる
これは、株主価値を高めるためには、多種多様な利害関係人との不可分な関係を重視せざるをえないことに着目し、株主価値の向上を目指すことが結局、株主ならびに利害関係人の利益を生むという考えによるものと考える
一方で、上記の議論の中では、いわゆるCommunitarianと呼ばれる人たちも存在したことを心に留めるべき
その考えが、今回の東京高裁の決定の上記部分に当たる考え方だ
つまり、企業価値は株主を含む利害関係人すべての価値であるとする考え方だ。
この考え方について、その理念において反対する人は少ない
それは、この考え方でも、もう一方の考え方でも、目指すところに差はないからだ
しかし、Communitarianの考え方をとって問題となるのは、この考え方に基づき企業価値を向上させようとした場合、何を目標に定めればよいか不明確であり、結局、集団の行動に方向性や原動力が生じにくい点だ
あなたが
「すべての利害関係人の価値を高めろ」
と言われたら、何をしたらいいか理解できるだろうか
そのかわりに
「株主の価値を高めろ
その実現のために利害関係人にも配慮しろ」
と言われれば、はるかに動きやすくなるだろう
ここでは、東京高裁があまりにも過大な議論をしてしまった感がある
つまり、投資ファンドという存在を頭から否定的にとらえてしまっているということだ
むろん、要旨の中には、東京高裁がこう判じたいくつかのスティール・パートナーズの固有の特徴がある
1. ブルドックの経営に関与しようとしないこと
(スティール側が経営参加への具体策を示さなかったためこう判断された)
2. MBOを提案する一方でTOBの手続きに出たこと
3. 対象会社の株式を対象会社や第三者に転売しようとすること
(ブルドック以外の投資実績から判断された模様)
4. 最終的には対象会社の資産処分まで視野に入れること
これらのうち1と3については、ファンド側にも打ち手のまずさがあったろう
しかし、2と4についてはどうであろうか
割安株式があり、強調的にMBOを申し出たが拒絶された
ならばMBIを行おうというのがおかしなことなのか
株式が割安に据え置かれること自体が株主への背信的行為であり、いわゆる「エージェンシー問題」が顕現したものと考えるべきだろう
それを株価面、ガバナンス面の両方から解消に向かわせるアクティビストの行動が非難されるのはいかがかと思う
また、今日資産を処分して企業価値を高めるということは、どの企業でも一般的に行われていることだ
これをわざわざ論拠に加える意味合いがどこにあったのかと戸惑う
そもそも、投資ファンドが利益追求を行うことに問題があるならば、それは立法府で対応を図るべきことだ
東京高裁の意図がそうであるなら、利益を追求する投資ファンドの活動を規制する法律を作るよう、国会で検討すべきだ
しかし、それは現実離れした考えであるように思う
特別決議なのか特殊決議なのかは別として、私は既存株主が適切な決議をして買収防衛を行うことには異論がない
しかし、今回の防衛策では、濫用的買収者が誰かかは名指しされていない
このような名指しをしない買収防衛策は、相手がまっとうな買収者であっても株主の意思に反して発動されてしまう可能性を残している
特別決議を取る覚悟があるならば、買収者が現れたときに臨時総会を開いて決議を取ればいいのではないかと思う
いずれにせよ、新会社法施行後1年あまりで高裁がこのような法解釈を示したことは残念だ
また、この買収防衛策が特定の株主に対する利益供与を可能にするスキームとなっていることに不安を覚える
以前も書いたが、東証には「買収防衛策導入済み企業部」という新しい市場を作った方がいい
株式会社の役割
株式会社を
理念的には企業価値を可能な限り最大化してそれを株主に分配するための営利組織としながら、
多種多様な利害関係人との不可分な関係を視野に入れた上で企業価値を高めていくべきとし、
企業価値について、専ら株主利益のみを考慮すれば足りるという考え方には限界があり採用することができないとした
これは、昨年試行された会社法に対する重要な一解釈である
企業価値研究会や会社法の法制化にあたっては、メンバーの大半が企業価値を株主価値と考える考え方をとったと伝えられる
これは、株主価値を高めるためには、多種多様な利害関係人との不可分な関係を重視せざるをえないことに着目し、株主価値の向上を目指すことが結局、株主ならびに利害関係人の利益を生むという考えによるものと考える
一方で、上記の議論の中では、いわゆるCommunitarianと呼ばれる人たちも存在したことを心に留めるべき
その考えが、今回の東京高裁の決定の上記部分に当たる考え方だ
つまり、企業価値は株主を含む利害関係人すべての価値であるとする考え方だ。
この考え方について、その理念において反対する人は少ない
それは、この考え方でも、もう一方の考え方でも、目指すところに差はないからだ
しかし、Communitarianの考え方をとって問題となるのは、この考え方に基づき企業価値を向上させようとした場合、何を目標に定めればよいか不明確であり、結局、集団の行動に方向性や原動力が生じにくい点だ
あなたが
「すべての利害関係人の価値を高めろ」
と言われたら、何をしたらいいか理解できるだろうか
そのかわりに
「株主の価値を高めろ
その実現のために利害関係人にも配慮しろ」
と言われれば、はるかに動きやすくなるだろう
投資ファンドの組織の性格
抗告人関係者(スティール・パートナーズ)は、投資ファンドという組織の性格上、・・・ひたすら自らの利益を追求しようとする存在といわざるを得ないと指摘されている
ここでは、東京高裁があまりにも過大な議論をしてしまった感がある
つまり、投資ファンドという存在を頭から否定的にとらえてしまっているということだ
むろん、要旨の中には、東京高裁がこう判じたいくつかのスティール・パートナーズの固有の特徴がある
1. ブルドックの経営に関与しようとしないこと
(スティール側が経営参加への具体策を示さなかったためこう判断された)
2. MBOを提案する一方でTOBの手続きに出たこと
3. 対象会社の株式を対象会社や第三者に転売しようとすること
(ブルドック以外の投資実績から判断された模様)
4. 最終的には対象会社の資産処分まで視野に入れること
これらのうち1と3については、ファンド側にも打ち手のまずさがあったろう
しかし、2と4についてはどうであろうか
割安株式があり、強調的にMBOを申し出たが拒絶された
ならばMBIを行おうというのがおかしなことなのか
株式が割安に据え置かれること自体が株主への背信的行為であり、いわゆる「エージェンシー問題」が顕現したものと考えるべきだろう
それを株価面、ガバナンス面の両方から解消に向かわせるアクティビストの行動が非難されるのはいかがかと思う
また、今日資産を処分して企業価値を高めるということは、どの企業でも一般的に行われていることだ
これをわざわざ論拠に加える意味合いがどこにあったのかと戸惑う
そもそも、投資ファンドが利益追求を行うことに問題があるならば、それは立法府で対応を図るべきことだ
東京高裁の意図がそうであるなら、利益を追求する投資ファンドの活動を規制する法律を作るよう、国会で検討すべきだ
しかし、それは現実離れした考えであるように思う
特別決議の意味
特別決議なのか特殊決議なのかは別として、私は既存株主が適切な決議をして買収防衛を行うことには異論がない
しかし、今回の防衛策では、濫用的買収者が誰かかは名指しされていない
このような名指しをしない買収防衛策は、相手がまっとうな買収者であっても株主の意思に反して発動されてしまう可能性を残している
特別決議を取る覚悟があるならば、買収者が現れたときに臨時総会を開いて決議を取ればいいのではないかと思う
いずれにせよ、新会社法施行後1年あまりで高裁がこのような法解釈を示したことは残念だ
また、この買収防衛策が特定の株主に対する利益供与を可能にするスキームとなっていることに不安を覚える
以前も書いたが、東証には「買収防衛策導入済み企業部」という新しい市場を作った方がいい
2007年07月05日
2804 ブルドックソース:権利落ちしても落ちない株価
ブルドックソースの買収防衛策が発動された
以前説明したとおりこの防衛策では新株予約権が株主に付与され、4倍の希薄化が起こる
その権利落ち日が今日7/6だった
理論的には株価が1/4近くまで下落するはずだった
東証も値幅制限を拡大し、それに備えていた
しかし、結果は前日比7.7%下落の1,365円であった
前日終値は1,479円だったから、その1/4は369円
スティール・パートナーズによるTOB価格は1,700円だから、その1/4は425円
スティール・パートナーズの持分約10%が希薄化しないとみて、1/3.7にしても400円または460円
なぜ、こんなにも乖離しているのか?
一部報道では新株発行までの需給によるものとされているが、それほど小さな差ではあるまい
現時点で考えられるのは、スティール・パートナーズによる東京高裁への即時抗告への思惑だろう
高裁がスティールからの差し止め請求を認めれば、新株予約権の交付自体が無効とされる
そうなれば、希薄化は起こらないのである
そうだとすれば、株価は今度はTOB価格の1700円を目指して上げていくことになる
いわば、確率分布にしたがって落ち着いた株価水準と言えるが、どちらに転ぶのだろうか
以前説明したとおりこの防衛策では新株予約権が株主に付与され、4倍の希薄化が起こる
その権利落ち日が今日7/6だった
理論的には株価が1/4近くまで下落するはずだった
東証も値幅制限を拡大し、それに備えていた
しかし、結果は前日比7.7%下落の1,365円であった
前日終値は1,479円だったから、その1/4は369円
スティール・パートナーズによるTOB価格は1,700円だから、その1/4は425円
スティール・パートナーズの持分約10%が希薄化しないとみて、1/3.7にしても400円または460円
なぜ、こんなにも乖離しているのか?
一部報道では新株発行までの需給によるものとされているが、それほど小さな差ではあるまい
現時点で考えられるのは、スティール・パートナーズによる東京高裁への即時抗告への思惑だろう
高裁がスティールからの差し止め請求を認めれば、新株予約権の交付自体が無効とされる
そうなれば、希薄化は起こらないのである
そうだとすれば、株価は今度はTOB価格の1700円を目指して上げていくことになる
いわば、確率分布にしたがって落ち着いた株価水準と言えるが、どちらに転ぶのだろうか
2007年07月03日
4723 グッドウィルのFloored Block Finance(FBF)
以前触れたとおりグッドウィル(以下、「G」)を介護事業から撤退させることは結果としてGを助けることになるかもしれない
Gの06年6月期のセグメント情報から、介護事業の実績を見ると
売上高636億円で営業利益9億円(営業利益率1.5%)
である
(07年6月期の第3四半期累計では当然ながら赤字になっている)
全体の営業利益率は4%超(06年6月期)であるから、介護事業の収益率は低いように見える
介護事業では投下資本が不要というなら別だが、人材派遣と比べて介護事業の方が金がかからないという感じはしない
少なくとも買収で介護事業の規模拡大を図ってきたわけだから、投下資本は相当にかかっている
ならば、介護事業は現時点ではGの足をひっぱっている事業なのだろう
介護事業からの撤退が盛んに報道されているGだが、最近ドイツ銀行による新株予約権の発行でも注目を浴び、株価は神経質な動きを続けている
Gの07年3月末の純資産は470億円弱
介護事業売却では売却損が発生するであろうから、それを補うためのエクイティ・ファイナンスであろう
このファイナンス主要FBFは日本では新しいものであるので、タームシートで内容を復習してみよう
3. 条件決定日は7/6
8. 新株予約権の目的である株式は400千株
新株予約権1個につき1株
10. 払込金額は基準価格(7/6の東証終値)の60%(予約権価額)
11. 行使価額は基準価格の40%
12. 行使価額の修正
行使請求の効力発生日の前日・前々日の東証終値の平均値の95%
から予約権価額を差し引いた金額に修正する
ただし1円を下限とする
14. 行使期間は7/11〜10/11
16. Gは予約権価額で新株予約権を再取得できる
重要な項目を読み下してみよう
簡単のため仮に、7/6のG株の東証終値が40,000円だったとしよう
予約権価額は24,000円となり、Gは96億円の対価を払込期日(7/10)に受け取る
これはGが得るファイナンスの最低額(厳密には+400千円)であり、この金額だけGは保証される
この後、
@株価が上昇し、50,000円のまま10/11まで動かないと、ドイツ銀行は
50,000 × 95% − 24,000 = 23,500円
の行使価額で新株予約権を行使できる
この時、
Gが調達できた資金の総額は
96億円 + 23,500 × 400,000 = 190億円
1株あたり47,500円でのエクイティファイナンスである
50,000円からすると5%のスプレッドが抜かれている
ドイツ銀行が仮に行使と同時に売却したとしたときの利益は、
50,000 × 400,000 − 190億円 = 10億円
である(5%のスプレッドの分)
A株価が動かず、40,000円のまま10/11まで動かないと、ドイツ銀行は
40,000 × 95% − 24,000 = 14,000円
の行使価額で新株予約権を行使できる
この時、
Gが調達できた資金の総額は
96億円 + 14,000 × 400,000 = 152億円
1株あたり38,000円でのエクイティファイナンスである
40,000円からすると5%のスプレッドが抜かれている
ドイツ銀行が仮に行使と同時に売却したとしたときの利益は、
40,000 × 400,000 − 152億円 = 8億円
である(5%のスプレッドの分)
A株価が下落し、20,000円のまま10/11まで動かないと、ドイツ銀行は
20,000 × 95% − 24,000 < 0
となるため、行使価格は下限の1円となる
この時、
Gが調達できた資金の総額は
96億円 + 1 × 400,000 ≒ 96億円
1株あたり24,001円でのエクイティファイナンスである
これは下落後の株価20,000円を上回っている
ドイツ銀行はこの株価下落リスクを負うことになる
もちろんドイツ銀行はプロの投資家であるから、株価のボラティリティにも収益機会を得るだろうから、ドイツ銀行の取り分はさらに多くなろう
このFBFのポイントは、
替わり金の下限が定められており、MSCBのような無限の希薄化が避けられること
株価の上下に関わらずドイツ証券は予約権を行使することになること
(Mandatory Exercise)
であり、Gもドイツ証券もこの点でのMSCBとの違いをアピールしているようだ
ドイツ証券のスプレッドも5%であれば妥当な水準に収まっていようから、特に敵視すべきファイナンス手法ではないのだろう
Gの06年6月期のセグメント情報から、介護事業の実績を見ると
売上高636億円で営業利益9億円(営業利益率1.5%)
である
(07年6月期の第3四半期累計では当然ながら赤字になっている)
全体の営業利益率は4%超(06年6月期)であるから、介護事業の収益率は低いように見える
介護事業では投下資本が不要というなら別だが、人材派遣と比べて介護事業の方が金がかからないという感じはしない
少なくとも買収で介護事業の規模拡大を図ってきたわけだから、投下資本は相当にかかっている
ならば、介護事業は現時点ではGの足をひっぱっている事業なのだろう
介護事業からの撤退が盛んに報道されているGだが、最近ドイツ銀行による新株予約権の発行でも注目を浴び、株価は神経質な動きを続けている
Gの07年3月末の純資産は470億円弱
介護事業売却では売却損が発生するであろうから、それを補うためのエクイティ・ファイナンスであろう
このファイナンス主要FBFは日本では新しいものであるので、タームシートで内容を復習してみよう
3. 条件決定日は7/6
8. 新株予約権の目的である株式は400千株
新株予約権1個につき1株
10. 払込金額は基準価格(7/6の東証終値)の60%(予約権価額)
11. 行使価額は基準価格の40%
12. 行使価額の修正
行使請求の効力発生日の前日・前々日の東証終値の平均値の95%
から予約権価額を差し引いた金額に修正する
ただし1円を下限とする
14. 行使期間は7/11〜10/11
16. Gは予約権価額で新株予約権を再取得できる
重要な項目を読み下してみよう
簡単のため仮に、7/6のG株の東証終値が40,000円だったとしよう
予約権価額は24,000円となり、Gは96億円の対価を払込期日(7/10)に受け取る
これはGが得るファイナンスの最低額(厳密には+400千円)であり、この金額だけGは保証される
この後、
@株価が上昇し、50,000円のまま10/11まで動かないと、ドイツ銀行は
50,000 × 95% − 24,000 = 23,500円
の行使価額で新株予約権を行使できる
この時、
Gが調達できた資金の総額は
96億円 + 23,500 × 400,000 = 190億円
1株あたり47,500円でのエクイティファイナンスである
50,000円からすると5%のスプレッドが抜かれている
ドイツ銀行が仮に行使と同時に売却したとしたときの利益は、
50,000 × 400,000 − 190億円 = 10億円
である(5%のスプレッドの分)
A株価が動かず、40,000円のまま10/11まで動かないと、ドイツ銀行は
40,000 × 95% − 24,000 = 14,000円
の行使価額で新株予約権を行使できる
この時、
Gが調達できた資金の総額は
96億円 + 14,000 × 400,000 = 152億円
1株あたり38,000円でのエクイティファイナンスである
40,000円からすると5%のスプレッドが抜かれている
ドイツ銀行が仮に行使と同時に売却したとしたときの利益は、
40,000 × 400,000 − 152億円 = 8億円
である(5%のスプレッドの分)
A株価が下落し、20,000円のまま10/11まで動かないと、ドイツ銀行は
20,000 × 95% − 24,000 < 0
となるため、行使価格は下限の1円となる
この時、
Gが調達できた資金の総額は
96億円 + 1 × 400,000 ≒ 96億円
1株あたり24,001円でのエクイティファイナンスである
これは下落後の株価20,000円を上回っている
ドイツ銀行はこの株価下落リスクを負うことになる
もちろんドイツ銀行はプロの投資家であるから、株価のボラティリティにも収益機会を得るだろうから、ドイツ銀行の取り分はさらに多くなろう
このFBFのポイントは、
替わり金の下限が定められており、MSCBのような無限の希薄化が避けられること
株価の上下に関わらずドイツ証券は予約権を行使することになること
(Mandatory Exercise)
であり、Gもドイツ証券もこの点でのMSCBとの違いをアピールしているようだ
ドイツ証券のスプレッドも5%であれば妥当な水準に収まっていようから、特に敵視すべきファイナンス手法ではないのだろう
2007年07月02日
投資家にも品格が必要だ
最近の株主総会で気になることがある
ここで言及するまでもないのは、アクティビストから攻撃されて経営者たる品格を備えないがごとき対応を見せる経営者の姿だ
ここで言及すべきは、品格を備えない株主の増加である
最近の株主総会でお決まりの株主の発言が
「なぜこの会社の株価は上がらないのか」
「もっと配当を増やしてほしい」
もちろん、株主は経済的な利益を得るために投資をしているのだから、気持ちが分からないわけではない
しかし、このような質問・指摘をする前に、まず価値についての基本的知識を身に付けるべきだ
まず、株価を上げろという株主の発言
これは間違ったことではない
しかし、株主の中には
「業績が上がっているのだから、もっと株価を上げるように努力せよ」
というようなことを言う人がいる
経営者は決まり文句として
「株価は市場が決めることなので、言及することは控える」
といった返事をする
株価を上げたいならば、
「業績を毎期向上せよ
市場にインパクトのあるエクイティ・ストーリーを与えよ」
と要請すべきだ
経営者が直接に株価を上げることは許されることではない
株価を上げるのは、むしろ投資家の仕事だ
経営者にできるのは、会社業績を向上させることと、将来への魅力ある展望を提起することだ
次に配当を上げろという株主の要請
これは多くは年金生活に入った世代の意見であることが多い
年金生活に入ってからも高リスクな資産クラスである株式への投資を続けること自体にも問題がある
しかし、やはり問題なのは、会社の財務体質を省みない増配提案だ
アクティビストが増配を提案するには、それなりの理由がある
あるときは、過剰なキャッシュを溜め込んでいる場合
あるときは、投資に足る成長戦略を提起できない場合
しかし、個人投資家の中にはこういう検討もなく、ただやみくもに増配要請を繰り返す人が多い
デット依存が大きかったり、優れた投資プランがある会社からキャッシュを吐き出させるのは企業価値の低下をもたらしかねないことだ
表面だけアクティビストの真似をする前に、まず最小限の投資・企業財務の基本を勉強すべきではないか
投資に関わる業を営む筆者が言うのも皮肉だが、
日本も金ばかりを重視する世の中になった、
と嘆くのは私だろうか
ここで言及するまでもないのは、アクティビストから攻撃されて経営者たる品格を備えないがごとき対応を見せる経営者の姿だ
ここで言及すべきは、品格を備えない株主の増加である
最近の株主総会でお決まりの株主の発言が
「なぜこの会社の株価は上がらないのか」
「もっと配当を増やしてほしい」
もちろん、株主は経済的な利益を得るために投資をしているのだから、気持ちが分からないわけではない
しかし、このような質問・指摘をする前に、まず価値についての基本的知識を身に付けるべきだ
まず、株価を上げろという株主の発言
これは間違ったことではない
しかし、株主の中には
「業績が上がっているのだから、もっと株価を上げるように努力せよ」
というようなことを言う人がいる
経営者は決まり文句として
「株価は市場が決めることなので、言及することは控える」
といった返事をする
株価を上げたいならば、
「業績を毎期向上せよ
市場にインパクトのあるエクイティ・ストーリーを与えよ」
と要請すべきだ
経営者が直接に株価を上げることは許されることではない
株価を上げるのは、むしろ投資家の仕事だ
経営者にできるのは、会社業績を向上させることと、将来への魅力ある展望を提起することだ
次に配当を上げろという株主の要請
これは多くは年金生活に入った世代の意見であることが多い
年金生活に入ってからも高リスクな資産クラスである株式への投資を続けること自体にも問題がある
しかし、やはり問題なのは、会社の財務体質を省みない増配提案だ
アクティビストが増配を提案するには、それなりの理由がある
あるときは、過剰なキャッシュを溜め込んでいる場合
あるときは、投資に足る成長戦略を提起できない場合
しかし、個人投資家の中にはこういう検討もなく、ただやみくもに増配要請を繰り返す人が多い
デット依存が大きかったり、優れた投資プランがある会社からキャッシュを吐き出させるのは企業価値の低下をもたらしかねないことだ
表面だけアクティビストの真似をする前に、まず最小限の投資・企業財務の基本を勉強すべきではないか
投資に関わる業を営む筆者が言うのも皮肉だが、
日本も金ばかりを重視する世の中になった、
と嘆くのは私だろうか