コラム

2007年08月17日

サブプライムローン問題の本質

米国に端を発した株安が拡大している
日本株は企業業績の動きとは必ずしも一致しないような動きをしている
むろん、同時進行の円高影響を考えれば、先行きの企業業績への不安も理解できる
また、世界的な信用収縮がさらに進めば、需給が崩れることでの資産価格の上昇もありうるだろう
しかし、素朴な疑問がある
なぜ、サブプライムローンがここまで影響を及ぼすのか

この背景には長く続く不可思議な米経済があるのだろう
グリーンスパンが96年に「根拠なき熱狂」irrational exuberanceと称した米国株式市場は、その後も10年に渡って上昇を続けた
貿易赤字がいくら継続しようと、それは資本収支によって埋められ続けると皆が仮定していた
(そうでないことは、おそらく皆が思っていただろう)
そういう不可思議な状態がとうとう崩壊を始めたということではないか

そうであるとすれば、今回の動きは「まことに理にかなったこと」ということになる
しかし、それは同時に「なにがしか投資をしている人」からすると甚大な影響を受けかねない事象だ
外貨運用をしていた人は円での投資回収額は目減りする
日本株運用していた人は言うにまたない

これが一時的な趨勢であれば、上の「不可思議」は当面忘れて、嵐の後にいつもどおりの戦いを再開すればよい
これが本質的な変化であるとすれば、一時的な損失は我慢せざるを得ないだろう
その上で、新しいレジームの中での投資のあり方を見越すべきなのだろうが、これが難しい
posted by 浜町SCI at 06:17 | Comment(0) | TrackBack(1) | 気になる投資環境

2007年08月16日

プロ限定の証券市場設立が相次ぐ米国

最近、ゴールドマンサックスやシティグループが金融機関や機関投資家など「適格投資家」に参加者を限定した証券市場を米国で開設している
なぜこんな市場が必要かと言えば、プロ限定とすることで証券取引法や企業改革法の適用を受けないからだ
参加者の資質を気にすることなく、証券取引に集中できるというコスト面、オペレーション面のメリットを見ているのだろう

背景には、インターネット取引の浸透で、個人投資家が高度な証券取引に参加する機会が増えてきたということがあろう
かつては専らプロが扱うような投資手法を個人投資家まで駆使するようになった
しかし、このような投資家も証券市場では匿名である
そうなると、従来の証券取引所ではプロ相手でも素人相手でも、素人相手を念頭に置いた投資家保護策を講じなければいけなくなる
これが、証券取引所全体のコストを不必要に押し上げ、業務の範囲を過度に限定していた
この弊害を回避するために投資家を再び区別して扱う試みが始まったのだろう

実際、最近の個人投資家向けサービスの充実度は驚くばかりだ
デイトレーダーを対象として、直接証券取引所へのアクセスを許すようなサービス
個人投資家が自作するトレーディング・ロボットによる売買を許すようなサービス
個人であってもプロと同じような投資手法をとることができるようになった
もちろん、そうなれば身の丈に合わないような方法を試す人も出てこよう

市場が分かれることにはデメリットも大きい
同じ資産クラスであれば、市場が分散すればそれだけ市場の流動性も減ってしまうかもしれない
一部の市場参加者が引き起こした趨勢だとすれば、むなしいデメリットだ
市場が厚みを増したから起こった趨勢だとすれば、よしとすべきか
posted by 浜町SCI at 06:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境

バフェット氏がダウ・ジョーンズ株を取得

共同通信が伝えたところでは、バークシャー・ハザウェイがダウ・ジョーンズ株を大量取得したとのこと
DJと言えば、8月1日にメディア王ルパート・マードック氏率いるニューズ・コーポレーションによる買収が取締役会で承認されたと報じられていた
ニューズ・コーポレーションと言えば、米国のイラン侵攻を後押ししたタカ派のテレビ局FOXの親会社だ

バフェット氏が取得したのは発行済み株式総数の約3%、160百万ドル相当
バフェット氏と言えば、少年時代に新聞配達をして貯めたお金で株式投資を始め、投資家としてもワシントン・ポストを含む新聞社への投資で成功を収めている

現在、米国のメディア業界は試練の時を迎えている
かつては、新聞社の多くがオーナー一族の強い発言力に支えられて、株式市場からの圧力など感じない企業体であった
しかし、競争がメディアの種類を超えて進展、つまりは資本主義に支えられた新興インターネット企業との戦いになった
強力な資金力をもつ新興企業との戦いは、優れたコンテンツだけでは勝てない戦いとなった
それに対応するため、多くの新聞社が資本市場への依存を強め、資金力を補うこととなったが、それは反面、株式市場からの報道への介入を許す結果ともなった
多くの新聞社で、役員会は現場経験のない役員の集まりとなったのである

世界で最も敬愛されている投資家バフェット氏は、そのような資本主義とは一線を画す投資家だ
新聞業界にも詳しい同氏がDJ株式を取得したなら、何か新しい道がWall Streetから拓かれるのかもしれない
posted by 浜町SCI at 00:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | Buffett Watch

2007年08月08日

ブルドック論争は終幕ではない

本日の日経新聞では、3つの紙面に渡ってブルドックソース買収防衛策にかかわる最高裁決定を報じている
大きな見出し
 「ブルドック買収」終幕
が読める
しかし、買収は終わっても提起された課題は解決しない

ブルドックソース経営陣の皆さんには悪いが、今回のごたごたについて筆者は少し経営者に厳しい立場にある
今回の防衛策の趣旨が分からないし、うがった見方をすれば会社の過剰反応または経営者の保身に見えてしまうからだ
そのような立場の筆者から見ても、最高裁の抗告棄却の論拠はとても妥当なものであったと思う

最高裁決定の要旨

株主の共同の利益を守るための買収防衛を行うことは認められる
その判断は株主自身により判断されるべきもの
今回、ブルドック株主総会では83.4%が賛成し可決した
それは、スティールの提案が株主の共同の利益を害すると判断したものとみなせる
その背景には、スティールが経営権獲得後の経営・投資回収方針を示さなかったことがあるのであろう

スティールは新株予約権の行使はできなくとも、金銭的な補償は得られる
その金額はスティールのTOB価格に基づき計算されたもの
株主もその金銭支払が会社に損失を与えることを承知している
スティールが濫用的買収者にあたるか否かにかかわらず、この買収防衛策は法令等に違反しない

スティールの新株予約権には価値に見合う対価が支払われるのであり、「著しく不公正な方法」とは言えない
新株予約権の無償割当が役員らまたは特定株主の支配権の維持のためであれば「著しく不公正な方法」と解すべき
しかし、本件はそのような場合に該当しない

最高裁決定のポイント

買収防衛の是非は株主自身により判断されるべき
今回はスティールによる買収を想定した上で株主自身が判断した買収防衛である
これを排除するのは、かえってブルドックの8割以上の株主の権利を侵すことになる

スティールが濫用的買収者であるかどうか判断しなかったこと
これは、意見の分かれるところだ
 判断しなかったから、東京高裁の判断が追認されるとする見方
 スティールを濫用的買収者とする根拠が十分でなかったとする見方
そもそも、東京高裁がスティールを濫用的買収者とする根拠は曖昧だった
企業経営も資本市場のよく知らない裁判官が心証だけで下したような感さえあった
最高裁は同じ過ちはしていないように見える
いずれにせよ、「濫用的」か否かは熟慮の上具体的な基準を示すことが大切だ
よかれと思ってできの悪い判断基準を作ってしまえば、資本市場・経営活動に大きなマイナスを及ぼしかねない

同じように経営者の保身としなかったこと
筆者が持った印象はともかく、今回の買収防衛策が経営者の保身である確たる証拠はない
ならば、それは司法の場ではシロであるべきだ
また、第三者の支配権維持のための買収防衛でないことは客観的事実である

濫用的買収者に金銭を与える方法を用意してしまったこと
これは残念なことだ
今回と同じことをグリーンメーラが行ったら、グリーンメーラは喜んで対価をもらっていくことだろう
公然とそのような反社会的な行動を行うフレームワークを作る結果になったことは残念だ

このような眺めてみると、最高裁の決定は、極めて冷静に感情を排して下されたものであるようの思う
東京高裁の決定があまりにも拙速であったので、今回の最高裁決定には胸をなでおろした

しかし問題はまだ終わらない

今回のブルドックの買収攻防戦は、いささかレベルの低い会社側の対応があった
そもそも買収防衛策という形をとること自体に、経営者の保身が見え隠れする
保身の魂胆を隠したいがために買収防衛策という形をとったのだろうが、みえみえのタイミングだ
むしろ、今回は株主の理解を得られていたのだから、TOBに応じないよう株主に呼びかけることで乗り切るべきだった
買収防衛策を導入するのはほとぼりが冷めてからでもよかったはずだ

問題が終わらないのは、ブルドックが依然として証券取引所に上場し続けることだ
いや、株主の利益を保護するためには上場を廃止するのは行き過ぎかもしれない
しかし、ブルドックのような会社では株主の権利が突如として制限されない状況が継続する
ならば、そのことを分かりやすく表示し、投資家に注意を喚起すべきだ
決算短信や有価証券報告書を何ページも読み進まなければわからないような株主権の制限を許してよいのか

これを防ぐために、株主権に潜在的に制限が起こりうる銘柄について、市場を分ける等の工夫をすべきではないか
今回の論争は、会社法等の法令上の論争を終えた
しかし、資本市場の守護神たる証券取引所による検討はまだまだ続くべきであるように思う
posted by 浜町SCI at 07:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境