コラム
2008年08月09日
最低賃金の改定が意味すること
6日、厚生労働省の諮問機関、中央最低賃金審議会が、今年の地域別最低賃金引き上げの目安を時給「15円程度」と決めた。
昨年は「14円程度」で、2年連続で10円台半ばの高い水準だった。
前向きに捉えるなら
言うまでもなく、賃金水準の低い層の生活を下支えする効果がある。
最低賃金の上げが、それより上の賃金水準の層にもプラスに波及することもある。
小泉元首相のもとで進んだ改革の弊害として現れた「格差」の問題について、下の層を救済することで緩和しようということだろう。
むろん、労働者賃金が上がれば、国内消費にもいい影響を与える。
心配するなら
低賃金に喘ぐ労働者がいるのは、中小企業であったり、派遣会社であったりだ。
中小企業については、現在の景気低迷で業績は悪化している。
賃金を上げなければならないなら、人員を絞り込むところも出てこよう。
人員削減を行うなら、雇用が失われる。
派遣へ切り替えるなら、また別の問題が生じてしまう。
マクロ経済へのマイナス影響では、企業業績にマイナスとなる変化は、株価等の低迷を通して消費の妨げとなるし、国内設備投資にも悪影響が及ぶかもしれない。
輸入インフレがホームメイドインフレにならないわけ
現在の原材料費等の高騰が始まったとき、ようやくデフレ脱却かと喜ぶ声があった。
日本は原材料等の多くを海外に頼っており、その輸入価格にインフレが生じ、これがデフレを反転させると期待されたからだ。
しかし、今は「悪いインフレ論」がさかんだ。
現在の価格上昇は、原材料費さえ転嫁できない水準にあることが多い。
なぜ、転嫁できないかといえば、そもそも需要の腰がそれほど強くなく、値上げするなら買い控える消費者行動が見られるからだ。
このような環境では、言葉は悪いが「便乗値上げ」は起こりえないから、ホームメイド・インフレに転換しない。
ここでいう便乗値上げというのは、悪い意味ではない。
輸入インフレが起これば、消費者の支出は増大してしまう。
ならば、消費者としての労働者は賃上げを願うだろう。
商品やサービスの価格がその賃上げ分を吸収するなら、輸入インフレ+αの価格上昇が起こることになる。
しかし、前段で述べたとおり、これが起こらない。
だから、賃上げの余力が企業にない。
日本の賃金は低いのか
まず、この根源的な問いを考えてみたい。
1980年代から、日本のメーカーは海外進出を進めてきた。
貿易摩擦などの外的要因はあるものの、大きな要因の一つが、経営資源のコストが低いことにあったろう。
特に、東南アジアや中国への進出では、その要因は大きい。
何の経営資源かと言えば、ヒトと不動産が主だ。
不動産はともかく、ヒトとはどういうことか。
同じ作業を国内で行うより、海外に移転して行ったことが安いからそうする、というのはどういうことか。
単純化しすぎの議論なのは承知しているが、同じ労働に対して1桁も2桁も異なる対価しか払わないというのは、いかがなものか。
Fair Tradeとは言えないだろう。
そう認めるなら、少なくとも単純労働の分野での労働者のコストパフォーマンスという観点では、日本の労働者の世界での競争力は極めて乏しくなったと言えよう。
では、ホワイトカラーではどうか。
米国でオフショアリングが急速に進んだ事実を見る限り、先進国のホワイトカラーの労働生産性というものたいしたものではないらしい。
日本人はまだ幸運だった。
日本語を話すだけで、インド人と競わなくてすんでいるから。
平均において賃金を下げるべきでは
日本の労働者の賃金水準が平均において高すぎると仮説を設けるならば、次に何を行うべきなのか。
言うまでもなく、平均における賃下げだろう。
しかし、あいにく労働賃金とは、ことさら下方硬直性の高い性格だ。
そこにきてデフレが進行し、賃金が据え置かれても実質賃上げのような効果を生じていた。
唯一の救いは、円がUSドルと連動し、世界通貨に対して安くなってきたことだ。
しかし、この円安も、日本の労働者の世界におけるコスト競争力を取り戻させるほどとはいいにくい。
賃金が下方硬直性を持つなら、円安やインフレを引き起こしつつ賃金を据え置き、実質賃金の引き下げを図ればいい。
これが解だろうが、平均において、消費者としての労働者は損失を被ることになる。
それでも、労働者としての競争力は上がるから、我慢するという意見もあろう。
まず手をつけるべきはダブルスタンダードの解消ではないか
筆者は、円安やインフレによる賃下げが最終的な解であると考えている。
しかし、その前にやるべきことがある。
企業内での労働のダブルスタンダードの解消だ。
正社員と派遣社員など非正規社員との間の差別を解消すること。
同じ仕事をするなら、同じ賃金を払うべきということだ。
実は、平均において議論するなら、正社員というのは非正規社員より働けていないことさえ多い。
日本の企業が高齢化する中で、年齢ピラミッドもピラミッドではなくなった。
そこで、導入されたのが「担当部長」とか「担当課長」とか言った、担当だか管理職だか分からないポジションだ。
ラインの長でないから権限は極めて小さく、権限がないから権限に基づく意思決定などの機能を果たせない。
仮に能力があったとしても、それを発揮する機会は担当者としてのみであって、限定的になる。
それでも、結構いい年収を稼いでいたりする。
かたや、非正規社員の働きは充実している。
必要なくなれば機動的に減員されてしまうから、人がだぶつくことも少ない。
正社員のように組合等の保護にあぐらをかいていることもなく、給料分の仕事をする確率は高い。
この正社員と非正規社員の間の「人種差別」を解消することが、まず着手すべきことではないか。
働かない、あるいは、権限が回ってこないために働く機会が与えられない正社員は、大胆な賃下げを行う。
これにより、逆に日本の労働者の競争力は上昇する。
一方、賃下げに遭った正社員は、給与が高止まりしている正社員への見方を厳しくするだろう。
それが、序列の規律となるのではないか。
このダブルスタンダードの解消は、正社員の待遇悪化という弊害を持っている。
しかし、このような施策なしに現状を引きずることは、むしろ正社員にとっても危険だ。
惰性に任せた体制が行き詰ったとき起こるのは、過去とあまりにも非連続的な調整メカニズムである。
昨年は「14円程度」で、2年連続で10円台半ばの高い水準だった。
前向きに捉えるなら
言うまでもなく、賃金水準の低い層の生活を下支えする効果がある。
最低賃金の上げが、それより上の賃金水準の層にもプラスに波及することもある。
小泉元首相のもとで進んだ改革の弊害として現れた「格差」の問題について、下の層を救済することで緩和しようということだろう。
むろん、労働者賃金が上がれば、国内消費にもいい影響を与える。
心配するなら
低賃金に喘ぐ労働者がいるのは、中小企業であったり、派遣会社であったりだ。
中小企業については、現在の景気低迷で業績は悪化している。
賃金を上げなければならないなら、人員を絞り込むところも出てこよう。
人員削減を行うなら、雇用が失われる。
派遣へ切り替えるなら、また別の問題が生じてしまう。
マクロ経済へのマイナス影響では、企業業績にマイナスとなる変化は、株価等の低迷を通して消費の妨げとなるし、国内設備投資にも悪影響が及ぶかもしれない。
輸入インフレがホームメイドインフレにならないわけ
現在の原材料費等の高騰が始まったとき、ようやくデフレ脱却かと喜ぶ声があった。
日本は原材料等の多くを海外に頼っており、その輸入価格にインフレが生じ、これがデフレを反転させると期待されたからだ。
しかし、今は「悪いインフレ論」がさかんだ。
現在の価格上昇は、原材料費さえ転嫁できない水準にあることが多い。
なぜ、転嫁できないかといえば、そもそも需要の腰がそれほど強くなく、値上げするなら買い控える消費者行動が見られるからだ。
このような環境では、言葉は悪いが「便乗値上げ」は起こりえないから、ホームメイド・インフレに転換しない。
ここでいう便乗値上げというのは、悪い意味ではない。
輸入インフレが起これば、消費者の支出は増大してしまう。
ならば、消費者としての労働者は賃上げを願うだろう。
商品やサービスの価格がその賃上げ分を吸収するなら、輸入インフレ+αの価格上昇が起こることになる。
しかし、前段で述べたとおり、これが起こらない。
だから、賃上げの余力が企業にない。
日本の賃金は低いのか
まず、この根源的な問いを考えてみたい。
1980年代から、日本のメーカーは海外進出を進めてきた。
貿易摩擦などの外的要因はあるものの、大きな要因の一つが、経営資源のコストが低いことにあったろう。
特に、東南アジアや中国への進出では、その要因は大きい。
何の経営資源かと言えば、ヒトと不動産が主だ。
不動産はともかく、ヒトとはどういうことか。
同じ作業を国内で行うより、海外に移転して行ったことが安いからそうする、というのはどういうことか。
単純化しすぎの議論なのは承知しているが、同じ労働に対して1桁も2桁も異なる対価しか払わないというのは、いかがなものか。
Fair Tradeとは言えないだろう。
そう認めるなら、少なくとも単純労働の分野での労働者のコストパフォーマンスという観点では、日本の労働者の世界での競争力は極めて乏しくなったと言えよう。
では、ホワイトカラーではどうか。
米国でオフショアリングが急速に進んだ事実を見る限り、先進国のホワイトカラーの労働生産性というものたいしたものではないらしい。
日本人はまだ幸運だった。
日本語を話すだけで、インド人と競わなくてすんでいるから。
平均において賃金を下げるべきでは
日本の労働者の賃金水準が平均において高すぎると仮説を設けるならば、次に何を行うべきなのか。
言うまでもなく、平均における賃下げだろう。
しかし、あいにく労働賃金とは、ことさら下方硬直性の高い性格だ。
そこにきてデフレが進行し、賃金が据え置かれても実質賃上げのような効果を生じていた。
唯一の救いは、円がUSドルと連動し、世界通貨に対して安くなってきたことだ。
しかし、この円安も、日本の労働者の世界におけるコスト競争力を取り戻させるほどとはいいにくい。
賃金が下方硬直性を持つなら、円安やインフレを引き起こしつつ賃金を据え置き、実質賃金の引き下げを図ればいい。
これが解だろうが、平均において、消費者としての労働者は損失を被ることになる。
それでも、労働者としての競争力は上がるから、我慢するという意見もあろう。
まず手をつけるべきはダブルスタンダードの解消ではないか
筆者は、円安やインフレによる賃下げが最終的な解であると考えている。
しかし、その前にやるべきことがある。
企業内での労働のダブルスタンダードの解消だ。
正社員と派遣社員など非正規社員との間の差別を解消すること。
同じ仕事をするなら、同じ賃金を払うべきということだ。
実は、平均において議論するなら、正社員というのは非正規社員より働けていないことさえ多い。
日本の企業が高齢化する中で、年齢ピラミッドもピラミッドではなくなった。
そこで、導入されたのが「担当部長」とか「担当課長」とか言った、担当だか管理職だか分からないポジションだ。
ラインの長でないから権限は極めて小さく、権限がないから権限に基づく意思決定などの機能を果たせない。
仮に能力があったとしても、それを発揮する機会は担当者としてのみであって、限定的になる。
それでも、結構いい年収を稼いでいたりする。
かたや、非正規社員の働きは充実している。
必要なくなれば機動的に減員されてしまうから、人がだぶつくことも少ない。
正社員のように組合等の保護にあぐらをかいていることもなく、給料分の仕事をする確率は高い。
この正社員と非正規社員の間の「人種差別」を解消することが、まず着手すべきことではないか。
働かない、あるいは、権限が回ってこないために働く機会が与えられない正社員は、大胆な賃下げを行う。
これにより、逆に日本の労働者の競争力は上昇する。
一方、賃下げに遭った正社員は、給与が高止まりしている正社員への見方を厳しくするだろう。
それが、序列の規律となるのではないか。
このダブルスタンダードの解消は、正社員の待遇悪化という弊害を持っている。
しかし、このような施策なしに現状を引きずることは、むしろ正社員にとっても危険だ。
惰性に任せた体制が行き詰ったとき起こるのは、過去とあまりにも非連続的な調整メカニズムである。
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