コラム

2008年09月25日

「産業の中の産業」の危機

P.ドラッガーが「産業の中の産業」と称した米国自動車産業が消滅の危機に瀕している。

格付機関のFitchが、米国自動車トップGMの格付を引き下げ、今後の見通しもNegativeとした。
発行体債務不履行格付が、B-からCCCへ1ノッチ引き下げられた。
担保付優先債権はBB-/RR1からB/RR1へ、無担保優先債権はCCC+/RR5からCCC-/RR5へとそれぞれ見直された。
引き下げの理由を、流動性の減少と資金調達の困難としている。
Fitchの見方の概要は次のとおり
GMが資金調達を行えない場合、12か月のうちに必要な手元流動性が最低限の水準に落ち込む。
背景には、海外事業の足踏みや金融危機によるGMやGMACの顧客へのリース能力の低下がある。
営業赤字やリストラ費用、デルファイ問題が2009年を通じてキャッシュ減少要因となるという。

一方、資金調達の道は限られている。
GMが任意従業員保険組合(VEBA)信託への給付方法とタイミングの変更を行うと予想しており、全米自動車労組(UAW)もGM破綻を防止したい思惑から協力すると見ている。
また、GMが連邦政府からある程度の金融支援を得ることができるだろうとも予想している。
これらの想定を踏まえた上で、GMが100億ドルを超える資金調達を行うのが困難と判断し、この12か月では流動性の減少を逃れられないとしている。

GMは劇的なコスト構造の変革を進めるだろうが、売上減と営業赤字の進行をオフセットするにはいたらないという。
人員リストラだけでなく、製品の環境対応についても課題を抱えており、営業赤字は2010年も続くだろう。
その中で、海外事業が業績を下支えするが、現在の欧州・中国の市場の弱さが、その寄与を減殺してしまう。
2010年からは経済環境は好転に向かい、UAWとの健康保険変更契約の恩恵も受け、長期的にはキャッシュ流出が収まるだろう。
しかし、短期的には債務を圧縮できるような状態にはなく、債務は500億ドルを超えると予想している。
また、ABS市場が不安を抱える中、経済環境も悪く、自動車メーカが顧客に信用供与を与えることができないためのマイナスも見込んでいる。
かつてのエクセレントカンパニーに対する格付機関の評価とは思えないものだ。
80年代の日本自動車メーカとの戦いに生き抜き、苦しいながらも米国製造業を支えてきたGMが危機に瀕している。

米国は、このまま、製造業の代表格の地盤沈下を許していいのだろうか。

85年には、米国企業の利益の半分弱を稼いでいた製造業は、現在は3割を切るようになっているらしい。
(日本経済新聞社がみずほ総合研究所調べとして引用した)
現在は、米国の企業利益の3割強が金融セクターによるものになったという。
しかし、それも、昨今の金融危機で大きく巻き戻しが起こるだろう。

P.ドラッガーは、かなり以前から、米国、そして日本において、社会のサービス化が進むと予言した。
それは、実現してきている。
ただし、米国のサービス化は、この20年を見る限り、少なくとも利益という面で、大きく金融セクターに依っていたらしい。

かつての産業の中の産業、自動車産業では、完成車メーカが大きな雇用を生み、その周辺に部品メーカが成長し、経済圏を形成していた。
金融も、被雇用者の種類こそ違え、ある程度の経済波及効果を持ってきたはずだ。
その金融界が大きく揺らいでいる。
すでに米国金融セクターでは、年初から8月までで10万人の雇用が失われたという。
まさに、新たな「産業の中の産業」となった金融産業で、バブルが崩壊したと言った趣だ。

世界が今、考えなければならないのは、米国の、自国の「産業の中の産業」は何であるべきかということではないか。
先進国では、これまで、ある程度のサービス化は避けられないとされてきた。
実際、金融を除外しても、サービス化は進んできた。
金融環境の悪化で、金融セクターでの巻き戻しが避けられない中、次はどの産業をドライバーとして社会を形作っていくのか。

今、予想されている金融収縮は、まさに、泡が萎んでいくという表現がぴったりだ。
投資銀行は、フィービジネスという基本路線をはずれ、自行のバランスシートで商売を始めた。
フィーは、払う側がその気にならなければ入らないが、資産運用益は、自行がバランスシートを使う決断をすれば入ってくる。
銀行がバランスシートを使う決断をすれば、金融市場における信用創造はどんどん進んでいく。
泡は表面張力が続く限り、大きくなっていた。
結果、泡は弾け、投資銀行は商業銀行に転換することによって生き残りを図っていく。

自行のバランスシートを使わないからアグレッシブになれたはずの投資銀行は、商業銀行となって、コンサバティブに生き残ろうとしている。
アグレッシブにリスクをとろうとしない産業には、もはや、社会の成長をリードする原動力はない。

米国は、どこに新たな成長ドライバーを見出すのか。
早く提示しなければ、海外投資家の米国離れを助長し、ドルは安くなり、ますます米国は疲弊する。
米国は、貿易赤字をオフセットするほど魅力的な成長ドライバーを世界に提示しなければいけない。

日本は、どこに新たな成長ドライバーを見出すのか。
これまでの金融セクター強化を続けるのか、製造業の再生を目指すのか。
日本の個人が抱える流動性が、銀行預金の中で、外に出たいと待っている。
posted by 浜町SCI at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(1) | 産業
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米国の製造業を救うのは誰か
Excerpt: General Motorsの第3四半期が開示され、驚きをもって報じられた。 四半期の営業損益が予想を上回る42億ドルの赤字になったという。
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Tracked: 2008-11-08 19:17