コラム

2007年03月13日

Debt HolderとEquity Holderの利益相反

本日の日本経済新聞「一目均衡」欄に編集委員、前田昌孝氏の「銀行の証券業務の限界」というコラムが載っている
これは、日産ディーゼルが行った一連のファイナンス取引についての意見だ
日産ディーゼルは2005年12月に一株824円の公募増資を行った
そして、ボルボが一株540円でTOBをかけている
単純計算で、公募増資に応じた株主の損失は176億円になると言うのだ

前田氏が問題とするのは、日産ディーゼルの経営陣メンバーに大きな変動はなく、大幅な株安の責任を負った形跡がないことだ
そして、日産ディーゼルの取締役1名、監査役3名はみずほグループの出身である

みずほグループは、一連の取引でどのような利益を得たのだろう
実は日産ディーゼルは2003年に転換権付優先株を発行し、その一部をみずほコーポレート銀行が引き受けている
この転換権付優先株は、優先配当と株式の希薄化をいやがる日産ディーゼルによって買入消却されている
それによって、みずほコーポレート銀行は巨額のキャピタル・ゲインを得ている
さらに、2005年の公募増資でもみずほ証券は主幹事、今回のTOBでも財務アドバイザーを務め、少なからぬフィー収入があった
いや、フィーなどはたいした話ではなく、それぞれの取引における転換価格・取引価格に強い影響力を持ったことが問題なのだ

お金に色はないから、優先株の消却のためのキャッシュの一部は公募増資による手取り金であったと考えるのが自然だろう
そうだとすれば、みずほグループは、
 優先株の投資資金を回収するために公募増資を仕組んだ
と陰口を叩かれかねない

ここで、より先鋭な話をするため、仮想の話をしよう
上の優先株が、優先株ではなく貸金だったらどうだろう
 銀行からの貸金を回収するために公募増資をさせた
 公募増資の価格より大幅に低い株価でのTOBを許した
仮にこうであったなら、一般株主への配慮のかけらもない取引であったことが露骨に感じられよう

これは、いわゆるDebt HolderとEquity Holderの利益相反と呼ばれるものだ
転換権付優先株はDebtとEquityの中間、いわゆるHybrid証券と言えるから、本件では、HybridとEquityの間で利益相反が生じたということだ

前田氏が言わんとすることは、みずほグループが銀行由来の金融グループであり、債権者としての権威をもって発行体に影響力を及ぼすことのリスクを説いたものだろう
債権者である銀行が債務者に影響力を行使し、経営者を派遣する
そのグループの証券会社が、債務者が発行体となるEquity Financeで価格への強い発言権を持つ
また、銀行がその発行体に同時にEquity Positionを持つ
このような構図が、今回の一連の流れである

私は、みずほグループや日産ディーゼルが悪意を持って一連の取引を行ったとは考えない
彼らはその時々の彼らの使命に忠実に行動しただけだろう
そして、うまく行った
しかも、そのリターンは莫大な金額だった
ただそれだけだ

しかし、上記のような利益相反の危険がある以上、それぞれの取引におけるチーム編成についてもう少し配慮の余地はなかったのか
皮肉なものだが、みずほ系の会社だからこそ、みずほグループ以外の金融機関を雇うというような度量も欲しいところだ
posted by 浜町SCI at 18:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境
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