コラム

2007年07月11日

2804 ブルドックソース買収防衛策についての東京高裁の決定

2007/7/10日本経済新聞に掲載された要旨から、重要な部分の骨子とコメント

株式会社の役割


株式会社を
理念的には企業価値を可能な限り最大化してそれを株主に分配するための営利組織
としながら、
多種多様な利害関係人との不可分な関係を視野に入れた上で企業価値を高めていくべき
とし、
企業価値について、専ら株主利益のみを考慮すれば足りるという考え方には限界があり採用することができない
とした
これは、昨年試行された会社法に対する重要な一解釈である

企業価値研究会や会社法の法制化にあたっては、メンバーの大半が企業価値を株主価値と考える考え方をとったと伝えられる
これは、株主価値を高めるためには、多種多様な利害関係人との不可分な関係を重視せざるをえないことに着目し、株主価値の向上を目指すことが結局、株主ならびに利害関係人の利益を生むという考えによるものと考える

一方で、上記の議論の中では、いわゆるCommunitarianと呼ばれる人たちも存在したことを心に留めるべき
その考えが、今回の東京高裁の決定の上記部分に当たる考え方だ
つまり、企業価値は株主を含む利害関係人すべての価値であるとする考え方だ。
この考え方について、その理念において反対する人は少ない
それは、この考え方でも、もう一方の考え方でも、目指すところに差はないからだ
しかし、Communitarianの考え方をとって問題となるのは、この考え方に基づき企業価値を向上させようとした場合、何を目標に定めればよいか不明確であり、結局、集団の行動に方向性や原動力が生じにくい点だ

あなたが
 「すべての利害関係人の価値を高めろ」
と言われたら、何をしたらいいか理解できるだろうか
そのかわりに
 「株主の価値を高めろ
  その実現のために利害関係人にも配慮しろ」
と言われれば、はるかに動きやすくなるだろう

投資ファンドの組織の性格


抗告人関係者(スティール・パートナーズ)は、投資ファンドという組織の性格上、・・・ひたすら自らの利益を追求しようとする存在といわざるを得ない
と指摘されている
ここでは、東京高裁があまりにも過大な議論をしてしまった感がある
つまり、投資ファンドという存在を頭から否定的にとらえてしまっているということだ

むろん、要旨の中には、東京高裁がこう判じたいくつかのスティール・パートナーズの固有の特徴がある
1. ブルドックの経営に関与しようとしないこと
 (スティール側が経営参加への具体策を示さなかったためこう判断された)
2. MBOを提案する一方でTOBの手続きに出たこと
3. 対象会社の株式を対象会社や第三者に転売しようとすること
 (ブルドック以外の投資実績から判断された模様)
4. 最終的には対象会社の資産処分まで視野に入れること

これらのうち1と3については、ファンド側にも打ち手のまずさがあったろう
しかし、2と4についてはどうであろうか

割安株式があり、強調的にMBOを申し出たが拒絶された
ならばMBIを行おうというのがおかしなことなのか
株式が割安に据え置かれること自体が株主への背信的行為であり、いわゆる「エージェンシー問題」が顕現したものと考えるべきだろう
それを株価面、ガバナンス面の両方から解消に向かわせるアクティビストの行動が非難されるのはいかがかと思う
また、今日資産を処分して企業価値を高めるということは、どの企業でも一般的に行われていることだ
これをわざわざ論拠に加える意味合いがどこにあったのかと戸惑う

そもそも、投資ファンドが利益追求を行うことに問題があるならば、それは立法府で対応を図るべきことだ
東京高裁の意図がそうであるなら、利益を追求する投資ファンドの活動を規制する法律を作るよう、国会で検討すべきだ
しかし、それは現実離れした考えであるように思う

特別決議の意味


特別決議なのか特殊決議なのかは別として、私は既存株主が適切な決議をして買収防衛を行うことには異論がない
しかし、今回の防衛策では、濫用的買収者が誰かかは名指しされていない
このような名指しをしない買収防衛策は、相手がまっとうな買収者であっても株主の意思に反して発動されてしまう可能性を残している
特別決議を取る覚悟があるならば、買収者が現れたときに臨時総会を開いて決議を取ればいいのではないかと思う


いずれにせよ、新会社法施行後1年あまりで高裁がこのような法解釈を示したことは残念だ
また、この買収防衛策が特定の株主に対する利益供与を可能にするスキームとなっていることに不安を覚える
以前も書いたが、東証には「買収防衛策導入済み企業部」という新しい市場を作った方がいい
posted by 浜町SCI at 07:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 備忘録
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/76807691
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック