コラム

2008年03月23日

責任を逃れるためだけの追い銭

新銀行東京への追加出資400億円が都議会で可決される見込みとなったと報道されている。
なんとも見識のない与党だが、いまさら非難するのも虚しいことだ。
ここでは、純粋にビジネス上の視点から問題点を2つ上げたい。

(1) 骨子に上げられた事業モデルの不合理

新銀行東京は事業規模を縮小して再建を図るという。
しかし、その内容は不可解だ。
営業方針として「ベンチャーへの融資や出資」としている。
これでは世界から笑われてしまう。

まず、ベンチャーへ融資をするというのがナンセンス。
ベンチャー企業というのは、その名のとおりハイリスクだ。
儲かるときには爆発的に儲かるが、それは一握りであり、ほとんどの企業は敗れ去っていく。
だから融資をするなら、リスクをカバーするために高利貸しをしなければいけない。
しかし、優良ベンチャーに限って、返さなければいけない銀行からの借入はしない。
高利ならなおさらだ。
だから、ベンチャーへ融資して損益を支えるなど世迷言であり、出資するしかなくなるだろう。

新銀行東京は普通銀行である。
その調達構造は預金だ。
つぶれかけた銀行だから出資する人もいないだろうから、今後も調達は預金または債券発行だろう。
そのようなローリスク調達をハイリスクなベンチャー投資に充てるというのはALMから言っていかがなものか。
流動性の低いアセットのために預金や債券で調達するのは自殺行為だ。

結局、エクイティファイナンスの分しか投資はできない。
そうであれば、銀行業である必要はない。
400億円を東京都からベンチャーへ出資するほうがよほど分かりやすい。

付帯決議は陳腐な猿知恵

都議会与党は追加出資承認の条件として
・2度目の追加出資等の財政支援をしない
・新銀行東京の経営監視体制を強化する
という付帯決議を付するという。
なんとも無責任かつ非現実的な話だ。
これでは、単に都議会が新銀行東京と縁切りするための追加出資だし、結局これは機能しない。

この付帯決議を付したところで、それは東京都と新銀行東京の間の話でしかない。
肝心の第三者はどう思うだろうか。
都議会があと400億円しか出さないと分かっていれば、この銀行と取引をしようとする優良企業・優良顧客はいるまい。
なりゆきで行けば行き詰るのだから、そのようなリスクの高い銀行と取引を好むのは
・ほかの銀行が相手をしない会社・人
・銀行からカネを掠め取ろうとする輩
ではないか。

さらに、将来再び行き詰ったとき、顧客や債権者はどうするだろう。
東京都は経営監視を強化するのである。
当然、こうむる不利益を東京都に償ってほしいと思うだろう。
その時に、付帯決議がどうだと言っても意味のないことだ。
東京都に経営を監視されている銀行が問題を起こせば、東京都に責任がないとは言えまい。

つまり、この付帯決議は、都議会与党のその場しのぎの方便に過ぎないのだ。
与党が確信犯なのか考えが足りないのかは分からないが、いかにもビジネスセンスのない政治屋の考えそうなことだ。

歴史を紐解けばわかることだが、これまでも銀行は数えられないほど破綻している。
そして、その多くに見られる特徴が何らかの組織の「機関銀行」であった点だ。
独立したガバナンスを持たない銀行は、驚くほど高率で破綻する。
それが歴史の教訓なのだ。

都知事のリーダーシップで東京都の「機関銀行」として誕生した新東京東京。
歴史の教訓を無視した、破綻すべくして生まれた金融機関のように思える。
歴史の教訓を無視した責任はあまりにも大きい。

次はない決断である。
都議会与党は、今度こそ責任をもって、決断を下すべきだ。
posted by 浜町SCI at 00:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治
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