コラム

2008年05月22日

試される日本の「政策投資」

Jパワーの株主総会を前に、TCIがProxy fightに乗り出した。
日本の安定株主の姿勢が試されている。

本論の前にお断りするが、筆者は電力会社への外国人投資に制限がなされることには反対しない。
公明正大になされるならば、至極当然なことだと思う。
電力は、市民生活に必須のユーティリティの一つであり、国防上も何らかの投資規制があって不思議ではない。

さて本論だが、日本企業の「政策投資」とは、取引のある会社の株を保有し、関係強化を図るというものだ。
業務上の提携関係がある会社同士で株式保有関係が起こるのはまっとうなこととの意識が日本にはある。
しかし、この考えには危険な落とし穴がある。

株式保有によって、会社間の関係が潤滑に進み、株主側に利益に働くとしよう。
穿った見方をすれば、これは特定株主への利益供与と見えなくもない。
第三者と異なる優遇を一部の株主へ与えることはとても危険なことだ。
誰が見ても会社全体に有利となるような関係でないかぎり、その他の株主の利益を削ることになりかねないのである。

裏を返せば、よく設計された提携関係というのは、株式保有をともなわなくてもうまく働くのである。
ただし、例外は、持分が過半数など高い場合だ。
この場合、提携の利益を投資収益を通して分配するという効果がある。
しかし、この場合も上場企業ならば、親子上場などの問題が発生してしまう。

TCIの試みの結果は見えている。
日本企業は「長期的な観点から経営陣を支持する」のだろう。
しかし、徒労に終わるのがわかっていても、この試みの意味するところは大きい。
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2008年05月14日

少数株主の権利は尊重されるか

NECエレクトロニクスの株式の6%を保有する米国のファンド、ペリーキャピタルがNECエレクトロニクスに書簡を送ったと報じられている。
過去5年分の取締役会議事録の開示を要請したという。
会社法第371条に定める取締役会議事録の閲覧権の行使と解される。
会社法では、閲覧又は謄写をすることにより、会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、裁判は閲覧・謄写の許可をすることができないともされている。

また、取締役会資料以外にも関連する帳簿閲覧が要請されたとすれば、同第433 条1 項に定める会計帳簿閲覧請求権の行使と解される。
議決権の3%以上、もしくは、発行済株式3%以上を保有(定款で引き上げ可能)する株主に与えられた権利だ。
請求にあたっては、株主は理由を明らかにしなければならないとされ、会社側が請求を拒否できる理由として、
1. 請求者が株主の権利の確保・行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
2. 請求者が会社業務を妨げ、株主共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
3. 請求者が会社と競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
4. 請求者が閲覧・謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。
5. 請求者が、過去2年以内に閲覧・謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるとき。
が挙げられている。

企業側の実務担当者の対応はどうなるだろうか。
かつて、今ほど株主重視でなかったころは、罰則規定が存在しないことから、会社側が請求を無視するということが行われた。
しかし、今は環境が異なり、応じざるを得ないというのが実態だ。
公器としての上場企業がどう対応するかが注視される。
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2008年04月24日

日本板硝子 (5202) グローバル化のお手本

日本板硝子の社長にイギリスの子会社Pilkingtonの社長のチェンバース氏が就任する。
社外取締役を除くボードの過半を外国人が占めるというから、立派な多国籍企業だ。
日本企業がグローバル化する手本とすべき事例ではないか。

日本板硝子は2006年に自社の倍の売上のある英社Pilkingtonを子会社化した。
国内市場が成熟する中で、海外比率わずか2割と出遅れたための起死回生の買収だった。
このような同業間での買収を成功させるのは、言うまでもなくPost-acquisition Consolidationである。

従来の日本企業のように、資本の論理を振りかざしたやり方だったらどうなるだろう。
日本板硝子側が「買収する金は日本板硝子の金だから」として、Pilkingtonの経営を入れ替え、日本側による統治を行うケースだ。
Pilkingtonの役員・従業員、特に優秀なホワイトカラーは自律性を失ったと感じ、極度なモラルダウンに陥っていただろう。
かつて誇を持って仕事にあたっていた人たちが、日系企業の「ローカル社員」という意識を抱いてしまう。
たくさんの従業員が、優秀な順に会社を去ってしまい、被買収企業の価値は瞬く間に失われてしまうだろう。

今回の日本板硝子の決定は、クロス・ボーダーの買収に限らず、Post-acquisition Consolidationのお手本と言えるものだった。
買収資金は買収会社のものであって、買収会社の役員・従業員のものではない。
それは、買収会社の株主のものなのである。
だから、Post-acquisition Consolidationは、それら株主の利益を最大化させるように努めなければならない。

買収で得るものは、財産や市場シェアだけではない。
大切なのは、優秀な人材だ。
だから、被買収会社の人材を最大限に生かす施策を考えるべきだ。
そこで「被買収会社の組織・人材に最大限に活躍していただく」という考えが必要になる。

そのような観点からも、今回の日本板硝子の意思決定は賞賛に値する。
こういう経営を行っていれば、市場シェアがさほど大きくない会社でも、自然とグローバル化がなされていくのではないか。
posted by 浜町SCI at 08:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境

2008年04月16日

オープンという概念はいつから始まるか

ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)による電源開発株式会社(Jパワー)株の買い増しが中止勧告された。
昨日の財務省関税・外国為替等審議会(外為審)外国為替等分科会外資特別部会による意見書を受けた経済産業省の決定である。
意見書は、TCIからの届出に関して、外国為替及び外国貿易法(外為法)第27条第5項の規定に基づき、意見を求められたことに対する回答だった。

意見書の骨子は次の通り:
Jパワーは長期的な設備投資を行うことで、我が国の電力の安定供給を支えている。
また、国の原子力・核燃料サイクル政策にとって重要な大間原子力発電所の建設計画等を予定している。
TCIによるJパワーの株式追加取得が行われた場合、電力インフラの計画・運用・維持、原子力・核燃料サイクル政策に不測の影響が及ぶ可能性を否定することはできない。
よって、政府において適切な対応がとられることを求める。

なんとも安全を見た意見書であるように読める
「不測の影響が及ぶ可能性を否定することはできない」のは程度の差こそあれ、社会の常だ。
この程度の根拠付けで否とするなら、この審議会は根拠少なく過大な発言力を持つと揶揄されるのではないか。

電力事業が外為法第27条の適用業種である以上、日本政府が可としようが否としようが、他国に言われるいわれのない決定だと思う。
しかし、その根拠・基準については、きちんと公表すべき点もあったろう。
日本経済新聞で報道されているポイントは4つ:
・3-5年の投資期間では長期的な視点が必要な原子力事業にそぐわない。
・役員派遣により電力の安定供給に懸念がありうる。
・TCIによる原発の国営化の提案は民営化に逆行する。
・TCIの投資実績から「株価を上げて逃げていく」心配がある。
電力という社会インフラの根幹をなす事業であるためだろうが、なんとも事なかれ主義、企業経営者よりの見方だと思う。
今議論されているのは、民営化され株式公開された事業に対して、出資を制限するかどうかだ。
そもそも、判断にグレーゾーンが存在するような領域で、上記のような主観的な判断材料しかないなら、民営化をすべきではなかったろうと言われているのだ。

外為審自身が意見書で明らかにしているとおり、対内直接投資を受けることは健全な企業統治を育てる力となりうる。
外国人投資家も日本の投資家も、日本企業がAgency Problemを最小化して、株主の利益に資するつもりがあるのかを注視している。
投資家は、お金を持った企業経営者が、そのお金を企業のために使わず、自己の保身・権力拡大のために使うのではないかと心配しているのだ。
企業経営者には、そもそもアクティビスト・ファンドに狙われないような立派な経営をお願いしたい。
posted by 浜町SCI at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境

2008年03月15日

旧カネボウ株式の買取価格に司法判断

旧カネボウは2005年に上場廃止になり、3つのファンドによるコンソーシアムによって1株162円でTOBされた。
TOBに応じなかった少数株主が商法に基づいて会社に株式買取請求をしたところ、1株162円を提示されたものだ。
株主側はこの価格が低すぎるとして東京地裁に適正価格の決定を申し立てていた。
東京地裁はDCFにより1株360円を妥当とする決定をした。
これは、上場廃止時の株価と同水準である。
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posted by 浜町SCI at 22:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境

2008年02月26日

国の財政問題を放置し続ける政治の怠慢

「国の借金が2007年12月末現在で838兆50億円になった」とCNetが報じている
国民1人当たりの借金は約655.9万円にあたるという

長らく政治は景気対策、消費喚起といった名目で財政問題に真剣に向き合うのを避けてきた
そのような名目の裏には選挙対策という本音が透けて見えるのは筆者だけだろうか
最近は多くの議員が財政問題を口にするようになったが、ねじれ国会のもたらした政争のための詭弁に聞こえてしまう

日本は国の債務を返す必要がないという人がいる
国債保有者が日本国民自身だからというのがその主な理由だ
確かに日本国債では国境を越えた急激な資金還流は起こりにくいという面はある
しかし、日本経済の現在の得意な環境を考慮することも同じように必要だろう
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posted by 浜町SCI at 19:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境

2008年02月05日

大株主が発行体から借入をして株を買う

昨日の適時開示で目をひくものがあった
テンポバスターズが代表取締役に2億円(金利1.9%)の社内融資を行うという
代表取締役が個人の株の信用取引で損失を出した穴埋め資金らしい
なんとも情けない話だが、ガバナンス上も大きな問題を含んでいる

会社が投資家に金をつけて自社の株を買わせるのは、自己株買いと同じ効果がある
今回の事例もよく似た性質のものだろう
期限は平成20年5月末と短期で、不動産担保で保全しているから、会社としては、つなぎ融資という考えなのだろう
回収は不動産からだから、自己株ではないという解釈だ
その論点には一面の論理がある

ただ、資金使途も保全も価値変動のある資産クラス
危うさのある話であり、とても情けない話だ
他に貸主がいなかったのかと、首を傾げたくなる
posted by 浜町SCI at 12:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境

2008年01月26日

「情報」の信頼性が担保されない時代

金融庁が運営する有価証券にかかわる情報開示サイト「EDINET」に異例のアラートが掲載されている
アステラス製薬、ソニー、三菱重工業、トヨタ自動車、フジテレビジョン、日本電信電話が川崎市の企業に買収されたことを示す大量保有報告書が提出されEDINETが開示しているというのだ
真実であれば20兆円というという売買金額であり、にわかには信じがたい
金融庁が調査に乗り出している
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posted by 浜町SCI at 00:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境

2007年12月17日

第三者割当増資の是非

会社法の解釈については、すでに様々なバリエーションがある
会社は誰のものかという最も基本的な問からしてそうだ
ただ、多くの人は、会社法において「会社は株主のもの」という精神が採用されていると考えている
もろん、株主だけのものではないとした上でだが

最近、上場企業の第三者割当増資についての批判が強まっている
発行会社が特定の投資家に第三者割当増資を行い、その投資家が議決権の1/3超を占めるといった事例が散見されるためだ
問題の本質は、この第三者割当増資が取締役会決議で行えることにある
株主の意思決定を経ずして、会社の支配権が異動しうることが問題とされているのだ
株式の買付で1/3超の議決権を取るならTOBを実施しなければいけないのに、第三者割当増資ならその手続きは要らないとされている
TOBが実施されれば、そのプロセスの中で株主の意思が反映されると考えられるが、第三者割当増資だと取締役会の一存で行えてしまう

上場企業の経営者の側には、株式発行授権枠について株主総会決議を経ているのだからそれでよいはずという意見もあろう
しかし、発行枠の決議の時には、その内容が株主の権利を侵害しうるということまでは意識されていない
経営者側が手続き論を楯に耳を貸さないなら、株主は今後の発行枠の決議を次々と否決していくことになりかねない

会社法の精神は「会社は株主のもの」であろう
むろんその他のステークホルダーにも配慮しなければいけない
しかし、決して「会社は取締役会のもの」ではないだろう
本来は立法や司法が対応すべきなのだろうが、それを待つというのも寂しい話だ
経営者の見識に期待したい
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2007年12月14日

与党税制大綱における証券税制

2008年の与党税制大綱の中で、証券税制について変更が提起された
軽減税率の存続と損益通算のスケジュール感が示されている

与党案では、個人のキャピタルゲイン5百万円、受取配当1百万円までを限度として軽減税率10%を存続するとしている
また、受取配当とキャピタルロスを損益通算できるようになる見込みだ
損益通算については、税があるべき姿に向かいつつあると評価できるが、軽減税率についてはどうだろう

なぜ軽減税率の上限金額についてキャピタルゲインが大きく受取配当金額を上回っているのか
あたかもキャピタルゲインを受け取ることを奨励しているかのようだ
本来、日本における「貯蓄から投資へ」の流れを後押ししたいなら、長期投資の果実とも言える受取配当額のキャップを大きくすべきではないか
おおよそ現在の証券市場の環境で、年間5百万円のキャピタルゲインを受け取る人というのはどういう投資をしている人だろう
これでは金持ち優遇のそしりを免れないような気がするのは筆者だけか
posted by 浜町SCI at 12:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境

2007年12月06日

経営者はまず法の精神を尊重すべき

IDECが6月のモリテックスの株主総会における役員選任決議の取り消しを求めていた裁判で、東京地裁はIDEC側の主張を認めた
6月の総会では、モリテックス経営陣とIDECの双方が役員選任決議案を提出したが、モリテックス側はIDEC側の委任状を集計の母数に参入していなかったという
Proxy Fightという言葉がよく知られた欧米では耳を疑う取り扱いだ

また、議決権行使をした株主にモリテックスが商品券を配布したことについても、特定株主の利益供与と認定した
商品券の配布は、賛否にかかわらず行われたから、差別的取扱いとは言いにくいが、司法は委任状の存在と意味を重く見たのだろう

モリテックス側は控訴するかもしれないが、その前によく考えてほしい
会社法のもとに存在している株式会社が、証券取引所規則にしたがって上場している
経営者は、根拠となる法と規則の精神を尊重してほしい
手続き論で争う以前に法と規則の理念を尊重すれば、このような混乱は避けられたのではないか
少なくとも、ぎりぎりまで対話の努力をすべきだった

会社法の解釈には幅があろう
会社を株主だけのものとするのは、やや教条的かも知れない
しかし、会社は経営陣のものではないことだけは確かだ
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2007年12月04日

株式投資税率軽減は継続すべきか

現在、国内上場株式に対する投資の収益についての税率は10%となっている
これは本来20%であるものが時限立法で軽減されているものだ
この期限がキャピタルゲイン、配当の順で切れようとしている
そして、業界や個人投資家らから、この軽減措置の延長が要望されている
参院選で民主党が勝利した中で、この議論の行方が見えにくい情勢だ

そもそも20%とは不当に高い税率だろうか
たしかにかつての源泉分離課税時代からすれば、益の出る売却に対して税負担は大きいのだろう
しかし、個人の所得税の源泉税率から言えば、20%はさほど高くない
現在の個人の限界税率は
 1千円から1,949千円まで5%
 3,299千円まで10%
 6,949千円まで20%
 ・・・
と上がっていく
世帯あたり平均所得が5,638千円(平成18年厚生労働省調査)だから、基礎控除380千円を考慮しても20%は決して高くない
分離課税の不労所得に若干高めの税率が課されるのはやむをえないのではないか

この議論は社会における富の分配のあり方そのものだ
活力のある社会を目指すのはいいが、同時に格差社会という弊害も生じる
何事もいきすぎはよくない
税率が上がれば筆者も損をする側だが、払うべきものは払うべきと言わざるを得ない

そもそも「貯蓄から投資へ」という課題を解決するには、企業がきちんとリターンを上げることが本論だ
株価変動リスクに見合うリターンを上げること
そのハードルを下げるために税率軽減を利用するのはいかがなものか
喜ばしいことに、近年状況は改善してきている
民間セクターの一層のがんばりに期待したい
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2007年11月30日

アメリカに翻弄される日本の金融制度

本日の日本経済新聞朝刊に「業務隔壁09年メド緩和」という見出しがある
銀行と証券の間のファイアウォールのルールを緩和しようというのである

そもそもファイアウォールのルールはアメリカの制度に倣って制定されたものだ
特定の銀行・金融グループによる産業支配が過度にならないためのルールだった
ところが、そのアメリカが「国際競争力強化」を旗頭にしてファイアウォールを緩和している
また、欧州ではかねてからユニバーサル・バンクという概念が一般的で、銀行・証券一体の金融機関も珍しくない

確かに国際競争力は重要だ
日本は鎖国しては生きていけない国だ
しかし、最近の日本社会の欧米化には、やや「悪しきを追随する」ような部分もあるように思えてならない
posted by 浜町SCI at 08:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境

2007年11月28日

株式持合の是非

11月27日、大和総研は「強化が続く事業会社の株式持ち合い、銀行も強化へ」と題するレポートを発表した
日本企業で株式持合が増加しているという指摘だ
この内容は、本日の日本経済新聞でも紹介されている

株式持合はすべてが悪というわけではない
たとえば、二つの会社が共同事業を行う場合だ
ともすると利益相反関係が生じやすい事業パートナー間で、持合はそれが先鋭な問題となるのを緩和してくれる効果がある

一方で、株式持合が一般株主の株主権の侵害になりかねないことは言うまでもない
持合相手から発行体の経営陣に反対する議決権行使がなされることはまれだ
また、片方の会社が傾けば、もう片方の会社にも損失が及ぶ
つまり、悪い言い方をすれば「見せ金」のようなものであり、一般株主の議決権を不当に希薄化させるものとも言えなくもない

大和総研では
 持ち合いが企業価値の向上に繋がることが肝要であり、
 今後、その持ち合いが具体的な企業価値向上に寄与
 していることの実証が求められよう。
と指摘している
これは企業経営者に説明責任のある命題だと思う
posted by 浜町SCI at 08:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境

2007年08月17日

サブプライムローン問題の本質

米国に端を発した株安が拡大している
日本株は企業業績の動きとは必ずしも一致しないような動きをしている
むろん、同時進行の円高影響を考えれば、先行きの企業業績への不安も理解できる
また、世界的な信用収縮がさらに進めば、需給が崩れることでの資産価格の上昇もありうるだろう
しかし、素朴な疑問がある
なぜ、サブプライムローンがここまで影響を及ぼすのか

この背景には長く続く不可思議な米経済があるのだろう
グリーンスパンが96年に「根拠なき熱狂」irrational exuberanceと称した米国株式市場は、その後も10年に渡って上昇を続けた
貿易赤字がいくら継続しようと、それは資本収支によって埋められ続けると皆が仮定していた
(そうでないことは、おそらく皆が思っていただろう)
そういう不可思議な状態がとうとう崩壊を始めたということではないか

そうであるとすれば、今回の動きは「まことに理にかなったこと」ということになる
しかし、それは同時に「なにがしか投資をしている人」からすると甚大な影響を受けかねない事象だ
外貨運用をしていた人は円での投資回収額は目減りする
日本株運用していた人は言うにまたない

これが一時的な趨勢であれば、上の「不可思議」は当面忘れて、嵐の後にいつもどおりの戦いを再開すればよい
これが本質的な変化であるとすれば、一時的な損失は我慢せざるを得ないだろう
その上で、新しいレジームの中での投資のあり方を見越すべきなのだろうが、これが難しい
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2007年08月16日

プロ限定の証券市場設立が相次ぐ米国

最近、ゴールドマンサックスやシティグループが金融機関や機関投資家など「適格投資家」に参加者を限定した証券市場を米国で開設している
なぜこんな市場が必要かと言えば、プロ限定とすることで証券取引法や企業改革法の適用を受けないからだ
参加者の資質を気にすることなく、証券取引に集中できるというコスト面、オペレーション面のメリットを見ているのだろう

背景には、インターネット取引の浸透で、個人投資家が高度な証券取引に参加する機会が増えてきたということがあろう
かつては専らプロが扱うような投資手法を個人投資家まで駆使するようになった
しかし、このような投資家も証券市場では匿名である
そうなると、従来の証券取引所ではプロ相手でも素人相手でも、素人相手を念頭に置いた投資家保護策を講じなければいけなくなる
これが、証券取引所全体のコストを不必要に押し上げ、業務の範囲を過度に限定していた
この弊害を回避するために投資家を再び区別して扱う試みが始まったのだろう

実際、最近の個人投資家向けサービスの充実度は驚くばかりだ
デイトレーダーを対象として、直接証券取引所へのアクセスを許すようなサービス
個人投資家が自作するトレーディング・ロボットによる売買を許すようなサービス
個人であってもプロと同じような投資手法をとることができるようになった
もちろん、そうなれば身の丈に合わないような方法を試す人も出てこよう

市場が分かれることにはデメリットも大きい
同じ資産クラスであれば、市場が分散すればそれだけ市場の流動性も減ってしまうかもしれない
一部の市場参加者が引き起こした趨勢だとすれば、むなしいデメリットだ
市場が厚みを増したから起こった趨勢だとすれば、よしとすべきか
posted by 浜町SCI at 06:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境

2007年08月08日

ブルドック論争は終幕ではない

本日の日経新聞では、3つの紙面に渡ってブルドックソース買収防衛策にかかわる最高裁決定を報じている
大きな見出し
 「ブルドック買収」終幕
が読める
しかし、買収は終わっても提起された課題は解決しない

ブルドックソース経営陣の皆さんには悪いが、今回のごたごたについて筆者は少し経営者に厳しい立場にある
今回の防衛策の趣旨が分からないし、うがった見方をすれば会社の過剰反応または経営者の保身に見えてしまうからだ
そのような立場の筆者から見ても、最高裁の抗告棄却の論拠はとても妥当なものであったと思う

最高裁決定の要旨

株主の共同の利益を守るための買収防衛を行うことは認められる
その判断は株主自身により判断されるべきもの
今回、ブルドック株主総会では83.4%が賛成し可決した
それは、スティールの提案が株主の共同の利益を害すると判断したものとみなせる
その背景には、スティールが経営権獲得後の経営・投資回収方針を示さなかったことがあるのであろう

スティールは新株予約権の行使はできなくとも、金銭的な補償は得られる
その金額はスティールのTOB価格に基づき計算されたもの
株主もその金銭支払が会社に損失を与えることを承知している
スティールが濫用的買収者にあたるか否かにかかわらず、この買収防衛策は法令等に違反しない

スティールの新株予約権には価値に見合う対価が支払われるのであり、「著しく不公正な方法」とは言えない
新株予約権の無償割当が役員らまたは特定株主の支配権の維持のためであれば「著しく不公正な方法」と解すべき
しかし、本件はそのような場合に該当しない

最高裁決定のポイント

買収防衛の是非は株主自身により判断されるべき
今回はスティールによる買収を想定した上で株主自身が判断した買収防衛である
これを排除するのは、かえってブルドックの8割以上の株主の権利を侵すことになる

スティールが濫用的買収者であるかどうか判断しなかったこと
これは、意見の分かれるところだ
 判断しなかったから、東京高裁の判断が追認されるとする見方
 スティールを濫用的買収者とする根拠が十分でなかったとする見方
そもそも、東京高裁がスティールを濫用的買収者とする根拠は曖昧だった
企業経営も資本市場のよく知らない裁判官が心証だけで下したような感さえあった
最高裁は同じ過ちはしていないように見える
いずれにせよ、「濫用的」か否かは熟慮の上具体的な基準を示すことが大切だ
よかれと思ってできの悪い判断基準を作ってしまえば、資本市場・経営活動に大きなマイナスを及ぼしかねない

同じように経営者の保身としなかったこと
筆者が持った印象はともかく、今回の買収防衛策が経営者の保身である確たる証拠はない
ならば、それは司法の場ではシロであるべきだ
また、第三者の支配権維持のための買収防衛でないことは客観的事実である

濫用的買収者に金銭を与える方法を用意してしまったこと
これは残念なことだ
今回と同じことをグリーンメーラが行ったら、グリーンメーラは喜んで対価をもらっていくことだろう
公然とそのような反社会的な行動を行うフレームワークを作る結果になったことは残念だ

このような眺めてみると、最高裁の決定は、極めて冷静に感情を排して下されたものであるようの思う
東京高裁の決定があまりにも拙速であったので、今回の最高裁決定には胸をなでおろした

しかし問題はまだ終わらない

今回のブルドックの買収攻防戦は、いささかレベルの低い会社側の対応があった
そもそも買収防衛策という形をとること自体に、経営者の保身が見え隠れする
保身の魂胆を隠したいがために買収防衛策という形をとったのだろうが、みえみえのタイミングだ
むしろ、今回は株主の理解を得られていたのだから、TOBに応じないよう株主に呼びかけることで乗り切るべきだった
買収防衛策を導入するのはほとぼりが冷めてからでもよかったはずだ

問題が終わらないのは、ブルドックが依然として証券取引所に上場し続けることだ
いや、株主の利益を保護するためには上場を廃止するのは行き過ぎかもしれない
しかし、ブルドックのような会社では株主の権利が突如として制限されない状況が継続する
ならば、そのことを分かりやすく表示し、投資家に注意を喚起すべきだ
決算短信や有価証券報告書を何ページも読み進まなければわからないような株主権の制限を許してよいのか

これを防ぐために、株主権に潜在的に制限が起こりうる銘柄について、市場を分ける等の工夫をすべきではないか
今回の論争は、会社法等の法令上の論争を終えた
しかし、資本市場の守護神たる証券取引所による検討はまだまだ続くべきであるように思う
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2007年07月05日

2804 ブルドックソース:権利落ちしても落ちない株価

ブルドックソースの買収防衛策が発動された
以前説明したとおりこの防衛策では新株予約権が株主に付与され、4倍の希薄化が起こる
その権利落ち日が今日7/6だった
理論的には株価が1/4近くまで下落するはずだった
東証も値幅制限を拡大し、それに備えていた

しかし、結果は前日比7.7%下落の1,365円であった
前日終値は1,479円だったから、その1/4は369円
スティール・パートナーズによるTOB価格は1,700円だから、その1/4は425円
スティール・パートナーズの持分約10%が希薄化しないとみて、1/3.7にしても400円または460円
なぜ、こんなにも乖離しているのか?
一部報道では新株発行までの需給によるものとされているが、それほど小さな差ではあるまい

現時点で考えられるのは、スティール・パートナーズによる東京高裁への即時抗告への思惑だろう
高裁がスティールからの差し止め請求を認めれば、新株予約権の交付自体が無効とされる
そうなれば、希薄化は起こらないのである
そうだとすれば、株価は今度はTOB価格の1700円を目指して上げていくことになる

いわば、確率分布にしたがって落ち着いた株価水準と言えるが、どちらに転ぶのだろうか
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2007年07月02日

投資家にも品格が必要だ

最近の株主総会で気になることがある
ここで言及するまでもないのは、アクティビストから攻撃されて経営者たる品格を備えないがごとき対応を見せる経営者の姿だ
ここで言及すべきは、品格を備えない株主の増加である

最近の株主総会でお決まりの株主の発言が
「なぜこの会社の株価は上がらないのか」
「もっと配当を増やしてほしい」
もちろん、株主は経済的な利益を得るために投資をしているのだから、気持ちが分からないわけではない
しかし、このような質問・指摘をする前に、まず価値についての基本的知識を身に付けるべきだ

まず、株価を上げろという株主の発言
これは間違ったことではない
しかし、株主の中には
「業績が上がっているのだから、もっと株価を上げるように努力せよ」
というようなことを言う人がいる
経営者は決まり文句として
「株価は市場が決めることなので、言及することは控える」
といった返事をする

株価を上げたいならば、
「業績を毎期向上せよ
 市場にインパクトのあるエクイティ・ストーリーを与えよ」
と要請すべきだ
経営者が直接に株価を上げることは許されることではない
株価を上げるのは、むしろ投資家の仕事だ
経営者にできるのは、会社業績を向上させることと、将来への魅力ある展望を提起することだ

次に配当を上げろという株主の要請
これは多くは年金生活に入った世代の意見であることが多い
年金生活に入ってからも高リスクな資産クラスである株式への投資を続けること自体にも問題がある
しかし、やはり問題なのは、会社の財務体質を省みない増配提案だ

アクティビストが増配を提案するには、それなりの理由がある
あるときは、過剰なキャッシュを溜め込んでいる場合
あるときは、投資に足る成長戦略を提起できない場合
しかし、個人投資家の中にはこういう検討もなく、ただやみくもに増配要請を繰り返す人が多い
デット依存が大きかったり、優れた投資プランがある会社からキャッシュを吐き出させるのは企業価値の低下をもたらしかねないことだ
表面だけアクティビストの真似をする前に、まず最小限の投資・企業財務の基本を勉強すべきではないか

投資に関わる業を営む筆者が言うのも皮肉だが、
 日本も金ばかりを重視する世の中になった、
と嘆くのは私だろうか
posted by 浜町SCI at 12:24 | Comment(0) | TrackBack(1) | 気になる投資環境

2007年06月28日

株主防衛策に備えるインフラ整備を

今日は株主総会の集中日だ
報道では、数多くの買収防衛策が承認されていると伝えられている
会社は株主のものだから、株主が納得するならば買収防衛策もいいだろう
しかし、ここまで買収防衛策が一般化した今、投資環境の整備がもう一段必要になったように思う

証券取引所は上場規則と開示ルールを見直すべきではないか

証券取引所は買収防衛策が承認される場合、事後のその内容を吟味し、上場継続の可否を決めるべきではないか
買収防衛策は法律上認められれば、すなわち上場が許されるというものではない
法律上許されるか否かは、既存株主の権利が不当に害されていないかがポイントの議論だ
しかし、上場維持が許されるか否かは、今後の新しい株主の権利が守られるかどうかの議論だろう

上場廃止が既存株主の権利を過度に害するとするなら、取引所に「防衛策導入企業の部」という新市場を作ってもよい
それであれば、投資家に十分な注意を喚起できるだろう

上場基準だけでなく開示にも工夫が必要だ
買収防衛策が導入されている企業では「決算短信」の表紙にその旨を表示すべきではないか
それほど投資にインパクトのある事象だと思う
また、有価証券報告書では、その買収防衛策の詳細について記載することが大切なのは言うまでもない

民間もフラグ付けを行うべき

「会社四季報」や「日経会社情報」などのディレクトリについても、買収防衛策についてのフラグを掲載してほしいものだ
何も知らない個人投資家が、誤って買収防衛策導入済みの銘柄を買うことを未然に防止できるだろう

株式を上場するということは、潜在的に買収のリスクを背負うことだ
それを買収防衛策で封じてしまうことは、「いいとこ取り」に励むあまり、投資家の権利保護をないがしろにしかねない
上場株式会社を社会主義的組織と考える株主ばかりなら、買収防衛策を承認するのもいいだろう
しかし、その場合は、その付けが他の投資家に付回されないよう注意しないといけない

「議決権行使書」の取り扱いを厳格にしよう

かつてほとんどの株主総会はのどかな集まりでしかなかった
その時代、議決権行使書は郵送の場合、印鑑を押していた
しかし、その印鑑と届出印を照合している会社は皆無だった
とにかく返送され、賛否に○がついていなければ、白紙委任とみなされていた

現在は議決権行使書に印鑑は不要だ
ただ返送するだけ
○がついていなければ白紙委任となる
喧々諤々の議論が行われる株主総会でこの扱いはいささかいい加減過ぎないか
このような形式だと、株主の本心を反映しない議案承認がなされてしまいかねない
「届出印を押す」という簡単な手続きなのだから、その程度は株主は責任をもって行うべきだし、シビアな意見の相違のある株主総会では、形式の整わない=株主の意思の明確でない議決権行使書は許容すべきでないと思う

むろん、そうすると各社総務部のみなさんは青くなろう
皮肉なことに、総務部のみなさんの心配は議案が承認されるかではない
議案承認に必要な定足が満たされるかにあるのだ


米国流のファイナンス理論が正しいとは思わないが、学ぶべきところは多い
企業ファイナンスにおける最大の論点には「エージェンシー問題」と「情報の非対称性」がある
いずれも、経営者が投資家を初めとするステークホルダーを偽ることへの懸念に根ざした論点である
買収を受けるリスクを負うということは、会社を動揺させてしまうデメリットもあるが、同時に経営者に規律を与える機会となりうる

買収防衛策がそのような機会を阻害してしまわないか心配だ
posted by 浜町SCI at 16:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 気になる投資環境